2024年10月
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都市の下水処理を目的としたハイブリット自然浄化システムを開発 インド

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は9月11日、同大の研究者が、都市の廃水に多く含まれる有機物やアンモニア性窒素を除去するため、微生物と植物を利用した自然浄化システムを開発したと発表した。研究成果は科学誌Chemosphereに掲載された。

廃水処理の一般的な方法は、下水道網に依存しており、中央集約的な施設を必要とする。この施設は、高コストで、エネルギーを大量に消費し、温室効果ガスが排出される。また、下水道網の適用範囲が限定的であり、残留汚染の原因にもなる。

バイオレメディエーションやファイトレメディエーションなどの自然を活用した浄化は、中央集約的に行う処理の代替ニーズに適している。バイオレメディエーションは、微生物によって水中の汚染物質を分解する技術であり、スポンジやココナッツ繊維などの担体にバイオフィルムを形成させる方法が安定性や処理速度の速さという点で注目されている。一方、ファイトレメディエーションは、植物を使って汚染物質を処理する技術であり、川の流量の変化に対応できるフローティング処理湿地(FTW)を利用した方法が注目されている。この方法では浮力マットに植物を栽培し、水上に浮遊させることで水位の変化に対応する。

論文の著者であるIIT-M土木工学部環境工学科のモハメド・イクバル・タイイル(Mohammed Iqbal Thayyil)氏とリギー・フィリップ(Ligy Philip)教授は、廃水の流量変動による微生物や植物の滞留時間を考慮し、嫌気性バイオフィルム、好気性バイオフィルム、植物水耕システムの3つの処理プロセスを持つ浮体式の処理湿地システムを開発した。

バイオフィルムは廃水中の在来微生物によって構成され、水耕システムは、地域で入手可能な植物種を用いた。提案された浄化システムは、都市部や都市周辺部から排出される未処理の廃水を軽減するため実用的で分散型のソリューションであることが確かめられた。

インド工科大学ルールキー校(IIT-R)の土木工学部環境工学科のアブサラフ・アフマド・カズミ(Absar Ahmad Kazmi)教授は、「このシステムは建設や維持がとても容易であり太陽光発電のみを用いて稼働させることができます。さらに、浄化槽での前処理をすることで詰まりの防止につながり、よりよいシステムになるでしょう」と述べ、研究成果を評価した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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