インド理科大学院(IISc)は9月19日、同大学の研究者らが地下水中のクロムなどの重金属を効果的に減少させることができるナノ材料ベースの方法を開発したことを発表した。研究成果は学術誌Journal of Water Process Engineeringに掲載された。
地下水は同国において重要な飲料水源となっている。一方、地下水中の重金属汚染は重大な健康被害をもたらす可能性がある。皮革なめし、電気メッキ、繊維製造などの産業廃水を通して、重金属の1つであるクロムは土壌や地下水に流入する。本研究の主執筆者であるプラティマ・バサバラジュ(Prathima Basavaraju)氏は「重金属が環境に入り込むのは、都市化や産業によるある種の不始末が原因です」と語る。
重金属汚染を除去する方法として、現在ではほとんどの場合、地下水を組み上げ、別の場所で化学沈殿、吸着、イオン交換、逆浸透膜といった方法により浄化している。IIScの研究チームは、重金属を浄化することができる鉄ナノ粒子を現場で使用する方法を開発した。
研究チームはまずナノゼロ価鉄(nZVI)からなるナノ粒子の合成を行った。nZVIは有毒で発がん性のある6価クロム(Cr6+)と反応し、有害性の低い3価クロム(Cr3+)に還元できる。一方で、粒子が固まりやすく応用しづらい課題があった。
次に研究チームは、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いてnZVIをコーティングした。バサバラジュ氏は「CMCはnZVIの周りに安定化層を形成し、個々の粒子を分離します」と説明している。CMCコーティングは鉄コアの酸化を防ぐことで材料の寿命を延ばすことにもつながった。研究チームはさらにCMC-nZVIの表面に硫化鉄の保護層を形成させS-CMC-nZVIとし、安定性の向上と反応性、効率性の維持に成功している。
S-CMC-nZVIはさまざまな条件下でCr6+をほぼ99%の効率で除去することに成功している。また、このナノ材料を含む砂のカラムに汚染水を通したところ強力な浄化作用も確認できた。研究者らはS-CMC-nZVIがクロムで汚染された地下水の現場浄化に有望な材料であることを示唆している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部