インドのコルカタにあるプレジデンシー大学の研究者らは、気温と塩分濃度の上昇により、特定の膜タンパク質の活性が高まり、タマネギの根にポリスチレンナノ粒子の蓄積が起こることを明らかにした。科学誌nature indiaが9月24日に伝えた。研究成果は学術誌Environmental and Experimental Botanyに掲載された。
タマネギの根のポリスチレンナノ粒子の蓄積により、活性酸素が発生し、細胞の構造と成長に不可欠な微小管の不安定化が起こる。微小管の不安定化により植物の生長が抑制され、食糧生産の損失をもたらし食糧安全保障を脅かす可能性がある。
環境ストレスが植物のマイクロプラスチックの蓄積にどのような影響を与えているかは明らかになっていない。これらを調べるため、プレジデンシー大学のクシク・プラマニク(Kousik Pramanick)氏が率いる研究チームは、砂の中でタマネギの根を育てた。球根から育てられたタマネギの根は、マイクロプラスチック、マイクロプラスチックと熱ストレス、マイクロプラスチックを含む塩水にそれぞれを別々にさらした。
研究チームは、発光物質を加えたプラスチック粒子が、タマネギの根にどのように入り込むかを追跡した。その結果、熱ストレスにさらした根は、塩水にさらした根より、多くのマイクロプラスチックを蓄積していた。熱ストレスは、根の細胞内のカルシウムイオン濃度を高め、アクアポリン(細胞膜に存在するタンパク質のチャネル)が開き、プラスチック粒子が根に入り込むことを可能にした。
研究チームは、根を熱ストレスにさらすとアクアポリン遺伝子の発現が増加するが、アジ化ナトリウムによりアクアポリン活性が阻害され、マイクロプラスチックの侵入が減少することを明らかにした。この結果から、熱ストレス下にあるアクアポリンが、タマネギの根へのプラスチックナノ粒子の侵入を促進していると示唆された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部