2024年11月
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ナノ構造の組み立て制御の新機構を解明、新材料開発などに期待 インド

インド政府は、9月27日、小さな分子単位が複雑な構造に自己組織化するプロセスである超分子自己組織化を制御する新たな研究成果について発表した。研究成果は、学術誌ACS Applied Nano Materialsに掲載された。

超分子自己組織化とは、小さな分子が外部からの指示なしに自然に大きく明確な構造に組み立てられるプロセスのことである。このプロセスを理解することは、分子レベルで特定のタスクを実行するナノデバイスなどの新しい有機材料の開発に不可欠だ。

ベンガルールのナノ・ソフトマター・サイエンスセンター(CeNS)とジャワハルラール・ネルー先端科学研究所(JNCASR)の研究者らは、インド科学技術省(DST)に属するこれらの独立研究機関の協力の下、キラル両親媒性ナフタレンジイミド誘導体(NDI-LおよびNDI-D)という分子の自己組織化挙動を調査した。研究では、①溶液中での組み立て②空気-水界面での組み立て--という2つの方法で分子を組み立てる実験が行われた。

溶液中で分子を組み立てた場合(①)、分子は球状ナノ粒子を形成した。これらの粒子は、強力な鏡像円偏光二色性スペクトルなど、光と特定の方法で相互作用するために重要な独自の光学特性を示した。一方、空気と水の境界面で分子を組み立てたところ(②)、分子は球状のナノ粒子ではなく、不規則な端を持つ平面的な2次元層を形成した。この場合、溶液中で組み立てられたナノ粒子とは異なり、ユニークな光学特性は示さなかった。つまり、分子が組み立てられる環境が、最終的な構造と特性を決定する重要な要因であることが明らかになった。

この研究により、異なる組み立て技術を用いることでナノ構造の形成を導き、特定の機能を持つ素材を創造できる可能性が示された。この発見は、材料科学の分野を進展させるだけでなく、さまざまな産業における今後のイノベーションの基盤となることが期待される。例えば、バイオ医療分野での、標的部位に効率的に薬物を届けるドラッグデリバリーシステムの開発や、電子機器分野での、より高速で効率的なデバイスの開発などが挙げられる。

(出典:PIB)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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