インド理科大学院(IISc)は9月30日、アリが山岳地帯の鳥類の分布に影響を与えたとする研究結果について発表した。この研究は学術誌Ecology Lettersに掲載された。
山岳地帯における種の多様性は、気候条件などの環境要因により標高とともに変化する。しかし、IIScの生態科学センター(IISc-CES)による最新の研究で、Oecophylla属のアリの存在も、中標高地域の鳥類多様性に影響を与える別の要因になりうることが明らかになった。
Oecophylla属のアリは主に熱帯アフリカ、アジア、オセアニアに分布する山地の低地に生息し、攻撃的な性質を持つことで知られ、昆虫を捕食する。
IISc-CESのウメシュ・スリニバサン(Umesh Srinivasan)助教が率いる研究チームは、既存のデータセットを活用し、複数の山脈で観察された鳥類の種を調査した。研究チームは、昆虫食や雑食など、同じ食性グループに分類される鳥類を対象にした。スリニバサン助教は、「まず、さまざまな山脈において、標高(100メートル)ごとでどの種の鳥類が観察されたかを記録しました。そして、それぞれの山脈の低地にOecophylla属のアリが生息するかどうかを調べ、鳥類の生息域との相関を検討しました」と説明している。
研究チームは、花の蜜を食べる鳥や果実食の鳥の多様性は標高が上がるにつれて減少する一方で、昆虫食の鳥類の多様性は標高約960メートルでピークに達することを突き止めた。これは、低標高地ではOecophylla属のアリとの競争が生じ、それによって昆虫食性鳥類の分布域が高標高地に押し上げられた可能性を示している。つまり、中標高地域で昆虫食の鳥類の多様性を左右する要因の一つとして、山脈の低地にOecophylla属のアリの存在がある可能性が示唆された。
スリニバサン助教授は「気候変動によって、これらのアリが高標高地に分布を拡大することになれば、高地に生息する鳥類にも影響が及ぶ可能性があります」と語っている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部