2024年11月
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インドがスーパーバグ(超多剤耐性菌)の温床となっている理由

世界のリーダーたちは、9月に開催された第79回国連総会(UNGA)の薬剤耐性(AMR)に関するハイレベル会合において、細菌やウイルス、真菌などの病原性微生物を死滅させる薬剤に抵抗するスーパーバグ(超多剤耐性菌)の世界的な行動の緊急性について議論した。科学誌nature indiaが10月14日に伝えた。

抗生物質の消費量が最も多い国の1つであるインドにおけるスーパーバグとの戦いは困難を極めている。その理由は複雑で、生物学的、社会的、制度的な問題が絡み合っている。インドにおける抗生物質の広範な誤用は、AMRの最大の要因の1つとなっている。処方箋なしで抗生物質を店頭で入手できるということは、人々が適切な知識を持たずに自己治療を行うことができることを意味する。

医療分野以外でも、農業や家禽類の飼育における抗生物質の誤用が事態を悪化させている。農家は抗生物質を感染症の治療だけでなく、家畜の成長促進剤としても使用しており、環境中の耐性遺伝子の拡散を加速させる。また、農場や製薬工場からの廃棄物が水質を汚染し、耐性菌の温床となることも少なくない。

AMRに関する国連総会宣言では、医薬品汚染という重大な問題が指摘された。医薬品汚染は世界的にほとんど規制されておらず、世界最大の抗生物質生産国であるインドでは大きな課題となっている。

インドにおけるAMRへの取り組みは、多角的なアプローチが必要となっている。人間や動物、環境の健康を統合するワンヘルスの枠組みが不可欠である。この問題への取り組みには、より厳格な規制、国民の意識向上、医療施設における衛生環境の改善も必要である。

医学誌The Lancetは、2030年までに細菌感染による死亡を10%削減、不適切な抗生物質の使用を20%削減、動物における誤用を30%削減することを目指した「10-20-30」という目標を提案する。これらの目標やその他の目標は国連総会で承認されたが、インドでこれらの目標を達成するには、政策の変更だけでなく、強力な政治的意思と、この耐性菌との闘いから誰一人取り残されないようにするための包括的な市民参加が必要となる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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