インド工科大学マドラス校(IIT-M)は、IIT-Mと英国のエディンバラ大学の研究者らがアクティブネマティック多重粒子衝突動力学(AN-MPCD)と呼ばれる計算アルゴリズムを使用し、不均一な境界壁がアクティブネマティクス流体のダイナミクスに与える影響の研究を行ったと発表した。研究結果は学術誌Soft Matterに掲載された。
アクティブ流体は、外部からの力なしで流れを生成することができる自己駆動粒子を含む流体である。アクティブネマティクスの研究は、アクティブ流体の挙動をよりよく理解するために行われる。ネマティクスは液晶相の最も単純で一般的なタイプの1つである。これは分子が特定の位置秩序を持たずに配列するが、配向秩序を持った相で、液体と結晶の中間的な状態である。アクティブネマティクスは、アクティブシステムや生命体のダイナミクスを理解するための研究である。
本研究は、IIT-M化学工学科のジャイディープ・P・ヴァイディヤ(Jaideep P. Vaidya)氏とサミッシュ・パタン・タムピ(Sumesh P. Thampi)教授、エディンバラ大学物理天文学部のタイラー・N・シェンドラック(Tyler N. Shendruk)教授が、表面に隆起と溝のある波状管の不均一な境界が、閉じ込められたアクティブシステムのダイナミクスを決定する上で、重要な役割を果たしていることを明らかにした。
デンマークのコペンハーゲン大学にあるニールス・ボーア研究所のアミン・ドゥーストモハマディ(Amin Doostmohammadi)准教授は、「本研究は、閉じ込めの形状がアクティブネマティクスの自発的な流れを生成する能力にどのような影響を与えるかを示す重要な1歩となりました。特に、著者らは数値シミュレーションを用いて、閉じ込められた管の壁に波状構造があると、自発的な流れの確立がさらに促進されることを示しました。また、自発的な流れの生成を超えて、著者らは、より高次な活動において波状構造がアクティブネマティクスの渦流の生成に特異なくぼみを提供することを示しました。これらの発見は、物質の能動輸送や受動輸送のためのアクティブマイクロ流体の設計への道を開き、生物学的物質の流れを制御する新たな手段を提示します」と述べ、この研究の重要性を強調した。
(2024年12月3日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部