インド初の有人宇宙飛行船ガガンヤーン1号(Gaganyaan-1)は、ショウジョウバエを同乗させ、宇宙旅行がショウジョウバエに与える影響を調査する。科学誌nature indiaが1月20日に伝えた。
宇宙旅行は、微小重力や放射線、概日リズムの乱れなど、さまざまなストレスを生物に与える。こうしたストレスが継続すると、生理機能が混乱し、老化が早まり、筋肉が衰え、代謝プロセスが変化する可能性がある。ムンバイのタタ基礎研究所(TIFR)の研究チームを率いるウラス・コルトゥール(Ullas Kolthur)氏は、「宇宙旅行は老化プロセスを早送りするようなものです」と語る。
研究チームは、微小重力が老化や代謝に及ぼす影響を調査するため、2026年打ち上げ予定の有人宇宙飛行船ガガンヤーン1号に、ショウジョウバエの1種であるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の同乗を計画している。このショウジョウバエは、ヒトの疾患に影響を与える遺伝子経路の約75%を共有しており、複雑な生物学的現象を研究するための理想的なモデルである。ガガンヤーン1号は、テレメトリーを使って200~300匹のショウジョウバエが入った複数の小瓶を収容した箱をリアルタイムで監視する。コルトゥール氏は、「飛行は5~7日間で、ショウジョウバエの寿命は50~70日であるため、観察には十分な時間があります」と述べた。
この研究は、グルコースや脂質の代謝を制御するSIRT1遺伝子を調査の対象としている。この遺伝子は、細胞の健康と寿命に重要な役割を果たしている。これまでの研究では、宇宙飛行中にSIRT1レベルの上昇が示されているが、この上昇が生物の保護効果をもたらすかどうかは分かっていない。コルトゥール氏は、「SIRT1レベルを操作することで、宇宙飛行の悪影響から生物を保護できるかどうかを調査します」と述べた。
研究チームは、ショウジョウバエが地球に帰還した後の経過についても関心を寄せている。地球の重力への復帰は、持続的な代謝や分子の不均衡など、長期にわたる生理学的変化を引き起こす可能性がある。研究チームは、遺伝子ツールと代謝アッセイを駆使して、これらの変化を詳細にマッピングする予定である。また、短期の宇宙旅行が老化プロセスに与える可能性を調査するため、研究枠組みの構築を計画している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部