インド理科大学院(IISc)は3月5日、IIScと英国のキール大学の研究チームによる研究で、捕食性細菌Myxococcus xanthusの存在が、抗生物質を使用せずに土壌細菌群に薬剤耐性(AMR)をもたらすことを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Current Biologyに掲載された。
M. xanthusは捕食性の種で、獲物を殺すために抗菌剤やその他の分子を放出することが知られている。飢餓状態に直面するとM. xanthusの細菌細胞は子実体と呼ばれる構造を形成し、そのうちの一部が胞子となるが、大部分の細胞は溶解し環境中に成長阻害分子を放出する。この分子にさらされた土壌細菌は、時間の経過とともに耐性を獲得し、耐性菌が増える現象が確認された。
研究チームの1人である、ジョツナ・カラテラ(Jyotsna Kalathera)氏は「培養可能な細菌から得られた知見が、培養不可能な微生物にも当てはまるかどうかを検証することは重要です」と語る。土壌中の細菌群集のゲノムを解析したところ、今回発見した現象によるAMRの獲得は培養不可能な細菌種にまで拡大する可能性があることが分かった。
人為的な抗生物質汚染がなくても、微生物の拮抗作用によってAMRが維持される可能性があるという事実は予想外の新発見であると研究者らは述べた。IIScの微生物・細胞生物学部門(MCB)のサメイ・パンデ(Samay Pande)准教授は「人為的な抗生物質耐性は大きな問題ですが、私たちが完全に無視している他の側面があるかもしれないということが重要です」と述べた。研究の共同筆頭著者であるサヘリ・サハ(Saheli Saha)氏は「これは、インドの土壌サンプルで確認されました。異なる場所の土壌サンプルをテストすることで、この現象についてより深く理解することができるでしょう」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部