インド理科大学院(IISc)は3月24日、赤道の雲帯の強さがインドモンスーン雨季における雲の北方伝播と降雨量に重要な役割を果たしていることを明らかにした。研究成果は学術誌npj Climate and Atmospheric Scienceに掲載された。
インドの夏季モンスーンは、6~9月にかけて年間降雨量の80%をもたらす重要な気象現象であり、赤道付近の雲帯がインド亜大陸へと北上することで雨季が訪れる。これまで、雲帯はその強弱に関係なく北方へと移動すると考えられていたが、今回の研究はこれに異を唱えるものである。
インド理科大学院の大気海洋科学センター(CAOS)の博士課程の学生であり、研究の第一著者であるアディティア・コッタパリ(Aditya Kottapalli)氏は、「既存の理論は、雲帯が弱くても常に北へ進むと示していましたが、私たちはそれが誤りであることを証明しました。実際には、赤道域で形成される雲帯が弱い場合には北方への移動が起こりません」と語った。
研究チームは、複数の気候モデルと高効率モデルを用いて、モンスーン季節内振動とも呼ばれる北方夏季季節内振動(BSISO)の伝播メカニズムを分析した。その結果、赤道の雲帯が十分に強い場合に限って、強風を伴って水蒸気が亜大陸上に供給され、雲帯が北上して雨季が始まることを明らかにした。
研究の責任著者である同センターPN ヴィナヤチャンドラン(PN Vinayachandran) 教授は、「赤道インド洋における大気と海の相互作用がモンスーン期の雨季を生む大きな要因となっていることが分かりました」と述べている。さらに、気候変動の影響で背景湿度(雨が降り始める前に存在する水蒸気量)が高まり、今後はインドおよび周辺海域の降水量が42~63%増加する可能性があると指摘した。研究者らは、この研究が、モンスーンやそれ以外の降雨量の予測精度を高め、既存の気象モデルの改善に寄与すると考えている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部