2025年04月
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認知慣性が誤情報拡散や社会の分極化に与える影響を数理解析 インド工科大マドラス校

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は3月25日、研究者らが誤情報の拡散と社会の分極化に関与する「認知慣性」の役割を、意見ダイナミクスの数理モデルを用いて明らかにしたと発表した。

FacebookやX、Instagramといったソーシャルメディアは、個人の意見発信方法に革命をもたらす一方で、誤情報の拡散や社会の分極化を助長する温床ともなっている。特に、同じ意見を持つ人々が互いに似た情報を共有し合い、既存の信念を強化する環境「エコチャンバー」は異なる視点の排除を促進し、分極化を深める可能性がある。

本研究では、IIT-Mの応用力学・生体医工学科および複雑系・動力学グループに所属するサヤン・グプタ(Sayan Gupta)教授とサマナ・プラネシュ(Samana Pranesh)氏が、1000人の個人からなる仮想ネットワークにおける意見形成の過程を「活動駆動型モデル」を用いて解析した。このモデルでは、同質性因子(個人が同じような人々と交流する傾向である因子)や意見の極性が考慮され、合意形成、過激化、二極化といった状態の変遷が再現された。

分析の結果、人々が新しい情報を前にしても既存の信念に固執する「肯定的認知慣性」が強い社会では、分極化が維持されやすいことが示された。一方、情報を柔軟に受け入れ直す「否定的認知慣性」が強い場合、個人は意見の修正を行いやすく、結果として「超臨界ピッチフォーク分岐」を通じた合意形成が促進される。

インドのジャワハルラール・ネルー大学のアニルバン・チャクラボルティ(Anirban Chakraborti)教授は、「本研究は、ソーシャルメディアにおける意見形成のメカニズムと認知慣性の役割を理解するための重要な枠組みを提供するものです。このような学際的な研究は、社会に広く悪影響を与える可能性のある分極化を緩和することに繋がります」とその意義を強調した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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