2025年05月
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加齢性難聴に関与するタンパク質変異を特定 インド

インド科学教育研究大学モハリ校(IISER Mohali)の研究チームは3月29日、脊椎動物の聴覚に不可欠なタンパク質であるカドヘリン23の特定の変異が、内耳における音波の電気信号への変換を妨げ、加齢性の難聴に関与する可能性があることを発表した。研究成果は学術誌nature communicationsに掲載された。

カドヘリン23は内耳の有毛細胞に存在し、音波を脳が解釈可能な電気信号に変換する役割を担う。研究チームは、マウスモデルを用いた実験で、カドヘリン23の3つの変異体S47、V47、P47に対して、磁気ピンセットを用いて持続的および振動的な力を加え、それぞれの構造安定性を検証した。3つの変異体のうち、S47とV47は自然変異体で、P47は突然変異体である。検証の結果、V47が最も大きな力に耐え、ゆっくりと展開することを発見し、機械的ストレスに強いことが分かった。S47は中程度の安定性を示し、P47は急速に展開し、最も小さな力しか耐えられなかった。この結果はP47が展開したままの状態を維持しやすいことを示唆している。

さらに、音による自然な刺激を模倣した反復的な力を加える実験では、P47は繰り返しの機械的ストレスへの耐性が低いことも明らかになった。これらの結果から、カドヘリン23のP47変異は加齢に伴う進行性難聴の一因である可能性が示唆された。今回の発見は、タンパク質の構造異常を修正することで難聴治療につながる可能性を示している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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