2025年05月
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3Dプリント製ニッケル基超合金IN718のクリープ耐性を大幅に改善 インド

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は4月30日、IIT-Mの研究チームが3Dプリント技術で製造されたニッケル基超合金インコネル718(IN718)のクリープ耐性を大幅に向上させる手法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Materials Science and Engineering: Aに掲載された。

3Dプリントとしても知られる積層造形(AM)は、CAD(コンピュータ支援設計)モデルをもとに金属や樹脂などを積層して製品を作る技術で、複雑な形状の部品を効率的に製造できる点が特徴である。特に、少量生産や高機能性が求められる航空宇宙分野や医療機器分野での活用が進んでいる。IN718は、耐熱性やクリープ耐性(時間依存の変形への耐性)に優れるため、航空機エンジン部品などで広く使用されているが、AM技術で製造された場合にはクリープ耐性が劣化する問題があった。

研究チームは、AM IN718のクリープ耐性が劣る原因は、微細構造内でニオブ(Nb)元素が不均一な空間分布になることであることを実証した。不均一になることでNb欠乏領域(無析出領域(PFZ))が形成される。このPFZは比較的柔らかい領域となり、高温での強度低下を引き起こし、クリープ耐性低下の要因であった。

解決策として、研究者らは溶体化処理温度を1150℃に最適化し、Nbの拡散を促進して化学均質性を向上させ、PFZを除去する方法を確立したことで、AM IN718のクリープ破断寿命が従来の熱処理に比べて5倍に改善したという。

米国のブラウン大学のシャルバン・クマール(Sharvan Kumar)教授は、「本研究は、航空機エンジン産業の主力製品であるAM IN718の高温変形特性を改善する重要な技術的貢献です。高温材料コミュニティにとって意義のある成果です」と評価している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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