2025年06月
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長期的栄養不足が感染症や老化に及ぼす影響、インドとスイスが共同研究

インドのアショカ大学とスイスのローザンヌ大学の研究チームは、栄養の乏しい環境で11年間、270世代にわたり飼育されたショウジョウバエの集団を用いて、栄養失調への適応が感染症耐性や老化に及ぼす影響についての研究を発表した。科学誌nature indiaが5月16日に伝えた。研究成果は学術誌Ecology and Evolutionに掲載された。

実験では、慢性的な栄養不足に適応したハエの若年個体が、栄養豊富な環境で育てられたハエよりも感染症に対する耐性が優れていることを発見した。この結果は、病原体を除去する能力が優れていたわけではなく、感染に対する耐性が強かったことによるものであった。また、これらの栄養不足系統のハエも加齢とともにこの感染耐性を失っていくことも分かった。

この現象について、研究責任者でアショカ大学の進化生物学者であるイムローズ・カーン(Imroze Khan)氏は「初期に有利だった適応が、老年期にコストとして現れる可能性がある」と述べている。インド理科大学院の発生生物学者であるウペンドラ・ノングトンバ(Upendra Nongthomba)氏は、この研究の対照的な結果は非常に興味深く、過去に例のない発見だと評価する。さらに、ノングトンバ氏の別の研究では、長寿のハエはより精緻な免疫応答を示し、逆に短命な個体は過剰な免疫反応を示して早死にする傾向があることが示唆されており、本研究結果との関連性も示唆された。

カーン氏とその研究チームは現在、今回観察された特徴を引き起こす生物学的メカニズムの解明を目指している。カーン氏は「この研究は食事と病気の進化相互作用が長期的な免疫をどう形作るのかを考えるよう促し、老化と感染症に関する新たな知見を提供している」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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