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『中国の科学技術の政策変遷と発展経緯』概要

中国の科学技術の政策変遷と発展経緯

編集
国立研究開発法人科学技術振興機構
中国総合研究・さくらサイエンスセンター
ISBN
978-4-88890-641-8
発行日
2019 Printed in Japan
寸法
21.0 × 14.8 × 1.0 cm
単行本
142ページ
在庫

概要

中国の科学技術の発展には目を見張るものがある。1949年の中国共産党による中華人民共和国の建国から70年、国内の動乱であった文化大革命の終了から40年強であるにもかかわらず、20世紀後半から21世紀にわたる怒濤のような経済発展を受けて科学技術レベルが急激に伸張し、今や米国と並ぶ科学技術大国への道を歩んでいる。このような短期間に、これほど急激に科学技術の力を伸ばした国は、中国以外にはかつて存在しなかった。それをもたらしたのは、まず中国国民の血と汗のたまものであろうが、それを支えるものとして共産党と政府が推し進めた科学技術政策が重要であろう。

中国において科学技術政策は、国家における政策の重要な部分である。科学技術政策により科学技術が進展し、ひいては国家の発展と国家の科学技術や産業の競争力の向上に寄与することになる。中華人民共和国が成立して以来、中国の科学技術政策はゼロから始め、点から面へ、断片化からシステム化へ、中央から地方へなど、多元化的な科学技術イノベーション政策体系が形成されてきた。科学技術の進歩とイノベーションを効果的に推進するために、科学技術政策および計画の策定、科学技術への資金投入、科学技術の奨励、科学技術管理体制の強化、税制優遇措置の実施などさまざまの施策を実施してきた。また、科学技術人材育成、科学技術の重点分野化、科学技術インフラ及び研究機関の建設、科学技術プラットフォームの構築、科学技術成果の転化、国際科学技術協力など多くの面において、大規模な政策を次々と策定し実施した。

これらの政策の実施は、様々な科学技術活動を展開させ、科学技術と経済の密接な統合を促進し、国の科学技術イノベーション能力を着実に向上させてきた。

これまでの科学技術政策を振り返ると、中国の科学技術政策には次のような特徴がある。

一つ目の特徴は、政策が包括的なことである。改革開放以来40年間、経済システムの改革と科学技術システムの改革を経て、中国の科学技術政策は財政、税収、政府調達、金融、知的財産など様々な分野の政策や、中央、地方にわたるマルチレベルの政策などと一体となり、包括的に立案、運営されてきた。

二つ目の特徴は、政策が系統的なことである。例えば、2014年に開催された第18回全国人民代表大会以降に公表された科学技術システムの改革措置は、科学技術イノベーションのあらゆる面をカバーしている。これまでの政策も同様であり、特に近年公表された「国家イノベーション駆動型発展戦略綱要」や「科学技術体制改革の深化に関する実施方案」などは、各種の改革課題や政策措置を系統的に取り上げている。

三つ目の特徴は、他分野の政策との協調性である。科学技術イノベーションの実施にあたっては、科学技術だけではなく、市場、産業、金融、教育、人材など関連分野と連携を取って進める必要があり、これらの分野との協調が重要と考えられ、中国の政策はこの点に十分な配慮をしている。

四つ目の特徴は、政策の内容が明確なことである。科学技術やイノベーションの発展の歴史から見ると、改革開放以来の中国の科学技術イノベーション活動は常に先進国の経験に基いており、それが中国の政策をより明確なものとしている。政策を明確な形で提示できることは、今後のイノベーション駆動型発展戦略を継続的にまとめる際には効力を発揮し、中国独自の特色のある科学技術イノベーション政策を立案することにつながると考えられる。

本報告書は、この中国政府による科学技術政策の流れを追いかけ、それがどの様な成果をもたらしたかを概観したものである。まず、大枠となる基本的な政策の流れを取り上げ、続いて資金配分、プロジェクト、人材育成などのテーマ毎の政策を取り上げた。記述の仕方としては、それぞれのテーマについての政策の流れを記述し、そのうえで個別の政策について具体的に記述した。この方法により、中国の基本的な政策の流れと個々の分野における政策の流れと具体的な内容が、十分に把握できるようになったと考えている。

ひるがえって、この中国の科学技術政策の変遷が我が国の科学技術にどの様な影響があるかであるが、まず現在において巨大化した中国の科学技術の実情を知るためには政策の変遷が一つの大きな道具となると考えられる。また、日本は将来にわたり中国の科学技術と協調するか対峙するかは別として、何らかの関係を持つしかないと考えられる。その場合にも、中国の科学技術政策の変遷をよく知ることは、重要なツールとなると考えている。

(本報告書「はじめに」より)


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