50年で韓国の科学技術競争力が世界10位圏に 科学技術イノベーション政策が奏功

2021年7月13日

林 茂根 (YIM MOOKEUN)

林 茂根 (YIM MOOKEUN):
(韓国研究財団 日本事務所 所長)

<略歴>

1976年韓国ソウル生まれ、韓国 延世大学校卒業、同大学院修了。
2006年韓国学術振興財団(KRF)入り。2009年韓国研究財団(NRF)に改組。
2020年11月から韓国研究財団 日本事務所長に就任。

韓国では、韓国科学技術研究所(Korea Institute of Science and Technology:KIST)と科学技術処(現在の科学技術・情報通信部)が1966年、1967年に相次いで設立され、さらに大徳研究団地の造成などにより、1960年代に国レベルの科学技術支援体系の基盤が確立された。この国レベルの科学技術支援体系が整ってからわずか50~60年という短期間で、世界10位圏に入る科学技術の競争力を備えるようになった。これは、世界でも類を見ないほど短期間に発展した例であると言える。

科学技術の発展につながる韓国政府の主な科学技術政策の歴史・経緯を振りかえると、次のとおりである。

韓国は1960年代に入ってから本格的に政府支援体制を整え始めた。第1次技術振興5カ年計画が1962年に策定され、それから5年後の1967年に科学技術振興法が制定された。このように、1960年代に韓国は科学技術関連法の制定および科学技術に関する政府研究所と省庁を新設し、5カ年総合計画を樹立するなど、政府支援体系の礎石を築いた。

1970年代に入り、韓国はより本格的に科学技術の振興と発展の重要性を認識するようになった。1971年には産業発展のために、科学技術分野に関する理論と応用力を実際に備えた人材を養成する、これまでなかった新しい形態の理工系大学院である韓国科学院(現在の韓国科学技術院、Korea Advanced Institute of Science and Technology:KAIST)を設立した。また、その時期に全国民の科学化運動という内容の大統領の年頭教書があり、国公立研究機関などが創設し始められた(1973~1977年)。その頃、韓国の科学技術インフラの集約地とも言える大徳研究団地の建設に関する計画の策定(1973年)と工事(1974年)が始まり、1992年に竣工した。また、韓国の学術振興に関する内容をまとめた学術振興法が1979年に制定され、韓国研究財団(National Research Foundation of Korea:NRF)の前身である韓国科学財団(Korea Science and Engineering Foundation:KOSEF)が1977年に設立された。

韓国研究財団(NRF)。人文社会科学から自然科学まであらゆる分野の研究資金支援を実施している。
写真提供:著者

このような国レベルの科学技術支援体系の整備とインフラの構築をもとに、1980年代に入り韓国政府は科学技術政策と発展方策をさらに具体化させ始めた。まず、科学技術の発展における選択と集中を目的として国立研究機関の統合・調整が行われ、韓国の基礎研究の振興および技術開発と基礎研究の成果をもとに、1982年には国の未来有望技術と融合技術を重点的に推進するための特定研究開発事業が推進された。また、2000年代に向けた科学技術の長期計画をこの時期に策定(1986年)し、科学技術政策を樹立するための韓国技術政策研究評価センター(現在の科学技術政策研究院、Science & Technology Policy Institute:STEPI)が設立され、優れた科学技術者を表彰する韓国科学賞も1987年に始まった。

1990年代から2000年代には、韓国の科学技術政策は以前とは違う方向に流れるようになる。それまでは国レベルの科学技術支援体系とインフラの構築、それを土台とした可視的で、質よりは量を中心とした科学技術政策が主だったとすれば、この時期に入ってからは投資の効率性や、選択と集中の側面に政策の基調がうつり始めた。政府の研究開発(R&D)予算が全予算の5%を超えるようにし、選択と集中の側面から、副総理の主宰で各省庁が行っている科学技術関連の主要政策及び研究開発計画の調整と、科学技術関連の予算の拡大及び効率的執行などに関する事項を審議させ、実質的に総合調整機能を強化する科学技術長官会議などの新設に関する内容を盛り込んだ科学技術の革新のための特別法の制定(1997年)、科学技術政策の総合調整体系の構築(1998~1999年)、統合的な科学技術行政体制の導入(2004年)、国家研究開発の統合ロードマップの提示(2006年)などが行われた。また、この時期は効率性の面で散在していた国公立研究機関をその機能に応じて統合・調整し、R&D管理機関の改組(2009年)が行われた。

このように科学技術政策の変化・革新とともに韓国が短期間で驚くべき成果を収めた。2019年には世界で初めて5Gの商用化を達成するなど、短期間で飛躍的な発展を遂げた。この結果、韓国の1965年の国内総生産(GDP)は31億ドル(約3,400億円)、一人当たりGDPは109ドルであったが、2018年現在のGDPは1兆6,194億ドル、一人当たりGDPは31,346ドルと、520倍以上のGDP産出につながる経済成長を成し遂げた。現在、韓国政府は今後5年間(2023~2027年)の科学技術イノベーション政策のビジョン、目標、方向及び科学技術イノベーションに関連した産業政策、人材政策、研究開発推進政策などを含む中長期発展戦略である「第5次科学技術基本計画」の策定に向けた基礎作業を進めている。