水素燃料電池車開発のヒーロー 韓国のイム・テウォン氏

2021年7月15日 AsianScientist

韓国では、よりクリーンな交通手段への道を開くため、イム・テウォン(Lim Tae-won)氏の主導のもと、ガソリン車から水素燃料電池車への移行が進められている。

AsianScientist:国際エネルギー機関(IEA)によると、自動車産業は世界の二酸化炭素(CO2)排出量の18%近くを占め、モビリティー産業全体(航空、鉄道、その他の交通手段含める)では24%程度まで増える。気候変動の緊急性を考えると、この数字を抑えるためのイノベーションが長期的に必要なのは明らかである。

アジアの都市部では特に問題が深刻で、急速な所得の伸びにより自動車の台数も激増し、大都市の大気汚染対策として、ガソリン車から電気自動車や水素燃料電池車へのシフトが世界に先駆けて進められている。

現在、米テスラのようなバッテリー駆動の電気自動車が、水素燃料電池の自動車よりも普及している。後者の技術は、日本や韓国などによって推進されている。

水素の推進派は、車両の大幅な軽量化(バッテリーは重い)、充電時間の短縮、走行距離の延長を掲げている。

反対派は、コストが高いこと(水素の製造と貯蔵、水素ステーションの新たなネットワーク構築など)、プロセス全体のエネルギー効率が悪いこと(まず車外で水素を製造し、次に車内で水素を電気に変換する)、バッテリー式電気自動車と比較して、自宅で車を充電できないという相対的な不便さを挙げている。

しかし、日本や韓国の密集した都市部では、この最後の反論は水素推進派に有利に働くかもしれない。多くの人は高層マンションに住んでおり、自宅に車を充電するスペースがない可能性がある。個々のドライバーがガソリン車から仮に水素燃料電池車ネットワークに移行しても、行動として何も変化させる必要がないのだ。

韓国では、2030年までに85万台のこの種の自動車を走らせることを計画している。この取り組みは何年も前から行われており、現代自動車 (Hyundai)では、2013年に水素燃料電池車の量産化に着手した。このプロジェクトは、現代自動車の「未来創生テクノロジーセンター(Future Innovation Technology Center: FITC)」のディレクターであるイム・テウォン氏が先駆的にリードしている。

イム氏は、1984年に韓国・延世大学校の冶金工学科を卒業。その後、米ニューヨーク州立大学の機械・航空宇宙工学科で修士号と博士号を取得し、1991年に現代自動車に入社した。

イム氏は2000年に同社の燃料電池開発チームに所属し、自動車に搭載可能な小型で価格競争力のある水素燃料電池の開発を主導。その結果が、2013年初頭の燃料電池電気自動車「Tucson ix35」の発売につながった。現在はFITCにおいて、モビリティ業界全体のために、より持続可能な新素材の開発に取り組んでいる。

「過去100年間、自動車業界の材料研究は、鉄製の部品をアルミニウムやプラスチックなどの複合材料に置き換えて、コスト削減や軽量化を図ることに主眼が置かれてきました。しかし、電気自動車のバッテリー、電気モーター、燃料電池に新素材や新技術が採用されるようになり、電動化に焦点が移ってきています」

イム氏はこのように新しい時代を展望する。