2022年07年29日
林 茂根(YIM MOOKEUN):
(韓国研究財団 日本事務所 所長)
<略歴>
1976年韓国ソウル生まれ、韓国 延世大学校卒業、同大学院修了。
2006年韓国学術振興財団(KRF)入り。2009年韓国研究財団(NRF)に改組。
2020年11月から韓国研究財団 日本事務所長に就任。
6月21日午後、韓国型宇宙ロケット「ヌリ号」(KSLV-Ⅱ)の2回目の打ち上げに成功した。1993年6月に韓国初の観測ロケットKSR-I(Korean Sounding Rocket-I)が打ち上げられてから約30年ぶりで、宇宙に向けた30年間の努力が韓国を「7大宇宙強国」に仲間入りさせたのである。韓国の科学技術情報通信部(科技情通部)と韓国航空宇宙研究院(航宇研)によると、ヌリ号は6月21日の午後4時頃(正確には3時59分59.9秒)に全南高興の羅老宇宙センターを離陸し宇宙に向かった。
科技情通部と航宇研は、韓国の宇宙輸送能力を確保するために独自に開発した韓国型宇宙ロケット「ヌリ号」の2次打ち上げが、国民の関心と声援の中で成功したと発表した。6月21日の午後4時に打ち上げられたヌリ号が飛行を終えた後、航宇研は宇宙ロケットの飛行情報が入っているヌリ号遠隔受信情報(テレメトリー)を初期分析した。その結果、ヌリ号は目標軌道(700km)に到達し、性能検証衛星を分離・安着させたことを確認したと明らかにした。これにより韓国は、1.5t級の実用衛星を地球低軌道に打ち上げることができる能力を立証し、今後独自的な宇宙探査と民間による宇宙開発の時代に向かう土台を築いたと言える。
(提供:韓国科学技術情報通信部)
航宇研によると、ヌリ号は打ち上げ後、定められた飛行シーケンスに沿い飛行過程が全て正常に進み、ヌリ号の1、2、3段のエンジンも全て正常に燃焼し、ペアリングも正常に分離し、ヌリ号に搭載された性能検証衛星の分離まで全て成功した。またこの日、南極の世宗基地のアンテナを通じて性能検証衛星と地上局の交信に成功し、衛星の位置も確認した。
科技情通部によると、今回のヌリ号の打ち上げの成功は韓国が独自的な宇宙輸送能力を確保し、自主的な国家宇宙開発能力を完全に備えたという点で大きな意味がある。今回の打ち上げを通じ宇宙ロケット「ヌリ号」の開発が完了したため、2027年まで信頼性を向上させるためにさらに4回の打ち上げを実施する計画である。
韓国政府は今後、ヌリ号の高度化事業に着手する予定である。前述したように、2023年の上半期から2027年まで衛星を搭載したヌリ号をさらに4回打ち上げ、打ち上げの信頼度を確保する計画である。続いて2030年に次世代の宇宙ロケットを活用した月着陸検証船、2031年には月着陸船を打ち上げる目標を立てている。これとともに、政府は初の深宇宙プロジェクトを進めている。今年の8月に韓国初の宇宙探査船「タヌリ」(月軌道船・Korea Pathfinder Lunar Orbiter·KPLO)をアメリカから打ち上げる予定である。
2010年3月から始まったヌリ号プロジェクトは、韓国の民間企業の積極的な参加を前提として進められた。韓国航空宇宙産業(KAI)、ハンファ・エアロスペース、現代重工業など300社以上の各自の専門性を基に、エンジンの製作からアセンブリシステム、発射台の建設までプロジェクトの全過程に参加し、ヌリ号の打ち上げを成功へと導いた。これを機に、韓国でも民間主導の宇宙産業時代への転換が加速化するものと見通される。
ヌリ号は6月22日(打ち上げ翌日)の午前3時2分頃、大田の航宇研の地上局との双方向の交信に成功したと発表した。打ち上げ当日に南極の世宗基地と大田航宇研の地上局のアンテナを通じて性能検証衛星の基本状態の情報を受信したのに続き、6月22日の早朝に性能検証衛星と大田航宇研の地上局間の双方向の交信まで行い、ヌリ号による衛星の軌道投入の性能が全て確認された。この日の交信では、遠隔命令を通じて衛星と地上局の時刻を同期化し、性能検証衛星に搭載されたGPS受信機も機能するようにした。また、今後の3軸姿勢制御のために必要な軌道情報も地上局から性能検証衛星に送った。
航宇研の研究陣が、性能検証衛星から受信した詳細情報データを分析した結果、状態は良好で、全ての機能が正常に作動していることを確認した。性能検証衛星は6月28日までの7日間、衛星の状態を点検しながら姿勢を安定させ、6月29日からは2日間隔で韓国の大学で開発した4台の超小型キューブ衛星を1基ずつ射出し、韓国の熱感知やPM2.5の観測のような独自的な業務を遂行する。
※ キューブ衛星の射出日程:6.29.(朝鮮大)/ 7.1.(KAIST)/ 7.3.(ソウル大)/ 7.5.(延世大)
一方、性能検証衛星には専用カメラが搭載され、キューブ衛星の射出過程を撮影する予定で、これに関する映像データは後日地上局に送られる。性能検証衛星は今後2年間、太陽同期軌道を1日に約14.6週軌道運動するよう設計されている。1カ月間の初期運営期間を経た後に本格的に業務を遂行する予定である。