【AsianScientist】シオマネキの眼にヒント-360 度の視野を持つ人工視覚システム開発

韓国と米国の研究者チームは、シオマネキの眼にヒントを得て、360度の視野を持つ新しい人工視覚システムを構築したことを発表した。

技術者たちは、新しい技術を設計する際に自然からヒントを得てきた。例えばアカエイのひれの動きを模倣した水中ロボットがある。また、日本の高速列車である新幹線の先頭形状はカワセミのくちばしをモデルにしており、大きな騒音を出すことなく日本国内の線路を高速で走行する。

今回、韓国と米国の研究者チームは、新しい水陸両用人工視覚システムを設計するためにシオマネキに着目した。このチームが開発したものは、ほぼ 360 度の視野を持ち、陸上でも水中でも機能するカメラ・可視化システムであり、Nature Electronics 誌に発表された。

シオマネキは半陸生の生き物である。シオマネキは簡単に回転する楕円形の眼柄を持ち、また、その複眼は水中にいてもあらゆる角度からの光を網膜の同じ場所に集めることができる。 シオマネキは進化により、あらゆる角度から敵を見つけたり、仲間のシオマネキを見つけたりするのに役に立つ、広い視野を持つようになった。本論文の共著者である光州科学技術院のヨン・ミン・ソン (Young Min Song) 教授は、シオマネキがなぜ新しい人工視覚システムのヒントとなったのか、その理由を説明する。

「生物に着想を得た視覚の研究は、以前には存在しなかった斬新な開発につながることが多いのです。すると自然について深く理解できるようになり、開発された視覚デバイスは構造的にも機能的にも効果的なものになるのです」

ソン教授たちが率いるチームは、シオマネキの複眼の形状と構造を模倣することから開始した。屈折率が変化する平らなマイクロレンズをくし形のシリコン光ダイオード・アレイに取り付け、それをさらに球状の構造物に取り付けた。マイクロレンズは複数の角度から入って来る光をセンサーに真っ直ぐに集束させ、センサーは入射光を画像として処理する。

この球状の「目」にさまざまな角度からさまざまな画像を示し、画像が検出可能であるか調べるために、陸上と水中で試験を行った。これは、マイクロレンズが環境に関係なく、光を調整してセンサーに焦点を合わせることが可能か否かを判断することを目的としていた。

結果は非常に有望なものであった。「目」は、水中で歪みなくこれらの画像をうまく検出できた。チームは、「目」が空中でも水中でもほぼパノラマの視野を持っていることも発見した。水平方向に300度、垂直方向に160度の視野である。

「私たちの視覚システムは、360度の全方向カメラを仮想現実や拡張現実に応用したり、自動運転車の全天候型ビジョンを作ることができます」とソン教授は語る。今後、広範囲を監視するセキュリティカメラの開発にもつながることだろう。

(2022年10月26日公開)

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