韓国の2つの研究チームが、海洋生物と公衆衛生を守ろうとして、海からマイクロプラスチックをろ過するナノ発電機を構築した。
海の中のマイクロプラスチックは、サンゴを漂白し、海洋生物を危険にさらすだけでなく、最終的には私たちの食事にも入ってくる。このため、マイクロプラスチック汚染を減らすという課題は環境への取り組みでもあり、公衆衛生対策でもある。だが、言うは易く行うは難し、が現実かもしれない。
問題の一部はそのサイズにある。マイクロプラスチックは非常に小さいため、海水からろ過するのは困難である。ナノ粒子の中には最終的にフィルター自体を詰まらせるものもあり、現在世界中で開発されているソリューションの多くは、相当なエネルギーと資源を消費する。
そのため、韓国の大邱慶北科学技術院 (DGIST) のリ・ジュヒョク (Lee Ju-hyuck) 博士と韓国産業技術研究院 (KITECH) のチョ・ハンチョル (Cho Han-cheol) 博士が率いる 2 つのチームは、摩擦帯電型ナノ発電機 (TENG) を使用して、水からマイクロサイズからナノサイズのプラスチックを除去する、環境に優しい技術を設計しようとした。
この技術は三次元多孔質ピラミッド型ポリジメチルシロキサン (PMDS) を使用する。これは、フラット型PDMSを使用する従来のTENGモデルと比較して、マイクロプラスチック粒子を効率的に除去する設計となっている。リ博士は AsianScientist 誌とのインタビューで、効率を改善する鍵は、フィルターの表面積を増やすことであると明かした。
「表面積が大きいほど、接触面積が大きくなり、接触帯電によって電荷密度が増加します」と彼は説明した。つまり、多孔質ピラミッド型PDMSは、フラット型PDMSよりも表面積が大きいので、TENGの出力は向上する。
リ博士ならびにDGISTおよびKITECHのチームにとっての課題は、多孔質ピラミッドを広い範囲で均一にすることだった。リ博士は、研究では「最適な条件を見つけるために、さまざまな大きさのピラミッドおよび空隙率の密度と大きさを試す」ことに多くの時間を費やしたことを教えてくれた。
この研究は Nano Energy 誌で報告された。多孔質ピラミッド型PDMSを使ったTENGは、フラット型PDMSを使った発電機の4倍のエネルギーを生成し、5.6倍の有毒粒子を除去できた。さらに、この技術はさまざまな場所で使える。
この研究は、韓国研究財団と科学技術情報通信部の支援を受けて行われた。全体的に、多孔質ピラミッド型PDMSを使うTENGは、ポリスチレン、セレン化カドミウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素だけでなく、重金属複合体のナノ粒子をろ過することができた。今回の共同研究は、より環境に優しく適応性の高い方法で河川や海洋に存在するマイクロプラスチックを除去できることを示すものであることから、この結果は有望であると言える。
摩擦帯電ナノ発電機分野の専門家であるリ博士は、彼が電気泳動の分野の「偉大な科学者」と呼ぶKITECHのチョ博士との協力を今後も続ける予定だ。「各分野の専門家と協力することは、新しい知識を学ぶ絶好の機会です。これにより、優れた研究成果を得ることができました」とリ博士。
2人とも、さらに大量の水からマイクロプラスチック汚染を除去するTENGの開発を続け、海をきれいにし、人々の健康を改善するための完全な商業化システムを開発することを考えている。
(2022年11月07日公開)