韓国・輸出額は6800億ドルで歴代最高値を更新、世界6位に

2022年12月16日 アジア・太平洋総合研究センターフェロー 松田侑奈

12月5日は、韓国の貿易の日。政府は、貿易の日を機に、第59回貿易の日記念イベントを開催し、2022年の輸出成果を公開した。

エネルギー価格急騰や金利上昇などの影響により、世界中の景気の悪化が目立つなか、韓国政府は輸出額の最高値、6,800億ドル(22年)を達成見込みであると発表した。2019年から2022年までの実績を見ると5,422億ドル、5,125億ドル、6,444億ドル、6,800億ドルと好調である。韓国で8大輸出分野と呼ばれる、半導体、バイオヘルス、ディスプレイ、エネルギー新産業、電気自動車、最先端素材、航空宇宙、ロボット、すべてが3年連続二桁の輸出増加率を見せ、貿易市場に大きく貢献した。

EUやアセアンなどにおける輸出額も史上最高を記録した。具体的には、アセアン1,156億ドル、アメリカ1,004億ドル、EU618億ドル、インド174億ドルである。アセアンにおいては、半導体、ディスプレイ、石油製品の輸出が大幅に増加し、アメリカにおいては、環境にやさしい自動車へのニーズが高まり、自動車や二次電池の輸出が増え、最短期間で1,000億ドル突破を果たした。

貿易額1兆ウォンの達成日数も年々短縮されているが、2018年は320日、2021年は299日、2022年は256日がかかった。

なお、これらの成果は、世界輸出国ランキング(WTO、2022年1~9月基準 1)でも現れているが、韓国は2022年、世界7位から6位にランクアップした 2。5位日本との差は338億ドルであるが、ここまでの僅差となったのは今年がはじめてである。

貿易市場の成長には、BIG3産業の支えが特に大きかったとされる。BIG3産業とは、韓国が第4次産業革命時代のグローバル競争に対応するため、主力で推進してきた新産業で、電気自動車・水素自動車を含む自動車産業、システム半導体産業、バイオヘルス産業を指す。今年は、半導体産業、自動車産業、二次電池、石油製品等がいずれも輸出額で歴代最高値を更新し、貿易強国の夢の実現が現実味を帯びてきた。特に半導体の場合、2021年5月から2022年9月まで連続17カ月、輸出額100億ドルを突破する気を吐いた。

米中対立が激化するなか、韓国政府は中国への依存を脱却するため、アセアンやインドに方向性を転換し、通商協力を拡大してきたので、企業の輸出活動に支障が出ることはなかった。2022年2月には、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が、12月には韓国・カンボジア自由貿易協定(FTA)が発効された。韓国・インドネシア包括的経済連携協定(CEPA)も来年1月に発効予定である。また、2022年には12年ぶりに東・アラビア湾沿岸地域における湾岸協力機構(GCC)との協力が再開され、中東諸国との貿易にも青信号が出た。昨年10月にはチリと鉱物供給におけるMoUを締結し、シンガポールとは今年11月にデジタルパートナーシップ協定(DPA) 3を締結している。

政府は、「エネルギー輸入の急増により、貿易全体は赤字となっているが、輸出拡大も勢いよく進んでおり、大きな心配はない。来年も政府各省庁が一丸となって、輸出支援の体系を構築し、現場や企業の輸出における課題解決に総力を尽くすことで、貿易強国に近づく」とコメントした。

中国のゼロコロナ政策やウクライナ情勢により多くの人は貿易業界に悲観的であった。韓国国内では、厳しい国際情勢に加え、5月から続く運輸業界・配達業界のストライキにより、莫大な経済損失を受けた。ただ、このような悪条件の中でも、韓国は可能性を諦めず、タイムリーな輸出方向性の変換や主力産業の躍進で目覚ましい輸出成果を収めた。米中にとどまらず、アセアン、中東、南米の諸国とも積極的に経済連携を進め、新しい可能性を示してきた。ウィズコロナに伴い、国際協力も改善しつつあるいま、韓国の貿易強国への道のりは更なる期待を集めている。

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