韓国政府、部署合同で先端分野の人材養成戦略を発表

2023年03月17日

林 茂根 (YIM MOOKEUN)

林 茂根(YIM MOOKEUN):
(韓国研究財団 日本事務所 所長)

<略歴>

1976年韓国ソウル生まれ、韓国 延世大学校卒業、同大学院修了。
2006年韓国学術振興財団(KRF)入り。2009年韓国研究財団(NRF)に改組。
2020年11月から韓国研究財団 日本事務所長に就任。

韓国政府は2月1日、大統領主宰で第1回人材養成戦略会議を開催し、部署合同で先端分野の人材養成戦略を発表した。人材養成戦略会議は、大統領を議長として関係部署の長官や、政府委員と教育界・産業界・研究界の民間専門家を含む約30人規模の民官協力協議体である。

このような人材養成戦略の議論の背景としてはまず、人材養成は教育ー技術ー産業ー雇用が絡み合った総合議題であり、各部署の懸案対応式の政策推進では効率的・効果的目標の達成に限界があることが挙げられる。そのほか、前例のない人口分布の変化と都市集中により地方人材の流出が続いているにもかかわらず、このような危機打開のための地域レベルの努力が不十分であること、先端分野の技術人材・研究開発人材に対する求人難の深刻化にもかかわらず、高等・職業教育の柔軟かつ迅速な対応は依然として不十分であることなどがある。

また、世界的な景気低迷の中でも韓国が新成長動力を発掘し、国家競争力を持続的に確保するためには、優秀な人材確保が不可欠であるにもかかわらず、これまで政府の人材養成政策や事業などが部署ごとに個別に行われ、部署間の連携・協力が不足し、類似・重複した問題が発生するという批判もあった。

一方、韓国政府は、このような問題を解決するために人材養成戦略会議を発足し、これを通じて国家的レベルですべての部署の力量を結集して総合的・体系的な人材養成政策を策定し、持続的に点検・管理する計画である。今後、人材養成戦略会議は、人材養成政策の部署別役割分担及び調整、先端分野人材養成方案の策定、人材養成政策に対する成果管理体系の構築などの役割を遂行する計画である。

1. 先端分野の人材養成推進戦

2. 先端分野の人材養成推進方案

核心課題1:5大核心分野の人材養成体系構築

5大核心分野の設定

政策の一貫性(国政課題、先端分野の主要政策など)、緊急性(現場の需要反映)、国際標準(OECD産業分類体系)を考慮し、5つの核心分野を選定して発表した。

先端分野の人材養成特別TFを構成し、各産業の核心部署を中心に年内に段階的に各先端分野に特化した人材養成方案を策定する計画である。

官民ガバナンスシステムの構築

大統領を議長とし、関係部署の長官が参加する「人材養成戦略会議」を通じて、人材養成政策の推進状況を持続的に点検・管理する計画である。

人材養成の基礎構築

このような人材養成政策を体系的・効果的に推進するために、国家人材養成基本法など人材養成3法の制定も推進する予定であり、学生の力量強化寄与度を測定する(仮称)学生成功指標を開発し、学生中心のカスタマイズ成果管理を推進する計画である。

※ 人材3法:国家人材養成基本法、職業教育法、人材データ管理法

データ基盤の人材管理・活用

採用公告ビッグデータを分析して新技術の力量別人材需要状況をリアルタイムで分析し、関連情報を関連機関と共有し、卒業者就職統計に職種情報を連携して教育課程の詳細履修内訳を基に人材供給状況を正確に把握し、学習と力量開発に対する成果を管理・認証するプラットフォームを構築して、プラットフォームで活用される標準化されたデジタルバッジを導入する予定である。

核心課題2:地域主導の人材養成の基盤づくり

地域革新中心の大学支援体系(RISE)構築

RISEシステムを構築し、大学支援行政・財政の権限を地方自治体に委任・移譲し、地域発展と連携した戦略的支援で地域と大学の同伴成長を図る計画である。

Regional Innovation System & Education

産学協力、生涯・職業教育など地域需要の反映が必要であり、地方自治体の協力が重要な大学財政支援事業の連携及び地方自治体の参加を強化する予定であり、市・道指定専門機関(非営利法人)が地域主導の大学財政支援事業の予算支援、地方自治体主導の計画を策定して大学財政支援を行う計画である。

地域競争力を高めるグローカル大学の育成

地域発展戦略と連携して地域の発展をリードし、地域内の他大学の成長を牽引できる特化分野で世界的な大学を育成するために今年、10大学を選定し、戦略的な財政投資と果敢なカスタマイズ規制特例及び税制支援を推進する予定である。

核心課題3:教育・研究・訓練の柔軟性・開放性の向上

大学の自律性拡大のための規制革新

高等教育法の全面改正(最小事項以外の自律化)などを通じて産業需要を速やかに学事運営に反映できる環境を造成し、大学内外の様々な仕事及び学習経験・活動が授業(教員)及び単位(学生)に連携できるよう大学の教育運営の弾力性を向上させる方針である。

研究人材の流入・育成の活性化

優秀な海外人材を誘致するために、政府招請奨学生を持続的に拡大し、韓国への留学の魅力向上・定住環境の改善など、留学生誘致の競争力向上方案を策定し、新進研究者の研究没入環境の造成と融合・複合分野の研究活動の支援強化、大学非専任研究人材の創意的研究支援の拡大などを施行する計画である。

熟練度の高い実務技術人材の養成

先端分野のマイスター高校の指定を拡大し、デジタル転換に応じた先導的職業教育モデルを確立し、先端分野の優秀な技術人材養成のために既存の特性化高校を再構造化して、自律的革新を支援する計画である。

生涯・職業教育訓練の充実

専門大学、ポリテク大学などで短期技術転換教育を提供し、先端分野への職業転換核心教育機関としての役割を遂行させる計画であり、企業主導の教育・訓練を強化するために先導企業が教育課程の開発・運営に直接参加して、先端実務知識と教育インフラを共有できるようにする方針である。

3. 今後、期待される社会像

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