日韓首脳会談後、ハイテク産業など経済協力が本格始動へ

2023年4月17日 JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー 松田侑奈

3月16日、東京で日韓首脳会談が開催され、日韓関係が改善に向け大きく動き出した。韓国では、今回の首脳会談をどう評価しているのか。

尹錫悦政権では、首脳会談の主な成果は、以下の5つだと明らかにした。

  • ① 約12年ぶりの大統領の単独訪日で、両国関係改善のきっかけを作ったこと。
  • ② シャトル外交が再開され、信頼関係の構築に貢献したこと。
  • ③ 未解決の歴史問題について、率直な意見交換を行い、解決に向けての基盤を作ったこと。
  • ④ 外交、安全保障、経済、文化、交流等における協力を強化することに合意したこと。
  • ⑤ 北朝鮮への対応やインド太平洋戦略を実現する重要性、ウクライナ情勢への認識合わせを行ったこと。

日韓首脳会談を受けて、両国の経済協力や交流が本格化される見込みである。韓国政府は、各経済協会と協力して、日韓企業の交流の場を多く設けたいと明かした。

尹大統領は、「日韓関係改善を機に、両国の企業が希望をもって、大きく活躍することを願っている。政府としては、規制緩和等できることに最善を尽くしたい」と宣言し、上半期に以下の5つの大きいイベントを開催する(一部開催済み)とした。

表 2023年上半期の日韓企業交流イベント
イベント名 主催 時期・場所 議題 参加者
第23回日韓新産業貿易会議 韓国貿易協会・日韓経済協会 3月30日、ソウル 日韓経済連携の強化方案、交流推進案 60の企業、100人程度
第55回日韓経済人会議 日韓経済協会・韓日経済協会 5月16~17日、
ソウル
ハイテク産業の日韓協力強化、第三国への進出問題 200の企業、300人程度
第12回日韓商議会分会 大韓商議・日本商議 5月末、釜山 両国の商議協力案、日韓の若手人材を支える人材プラットフォームの構築問題 40の企業、140人程度
第1回日韓ビジネス戦略会議 関西経済連合会・大韓商議 6月中、釜山OR大阪 2025年大阪―2030年釜山EXPO連携案 40の企業、140人程度
2023年アジアビジネスサミット 全国経済連合会・日本経済団体連合会 7月初旬、ソウル 日韓企業協力方案、第三国での日韓企業連携強化案 70の企業、100人程度

日韓首脳会談後、日本は3品目に対する輸出規制を解除し、韓国は世界貿易機関(WTO)に提訴(韓国は、日本側の輸出規制が徴用工問題に対する不当な対抗措置だとして、19年9月に提訴)の取り下げを申請した。

3月30日に開催された日韓新産業貿易会議には、産業通商資源部の次官も参加したが、「政府はこれから、半導体など先端産業への供給ネットワーク強化、資源の無機化へ向けての取り組み、カーボンニュートラルの実現、第三国への企業進出を積極的に支援する予定である」とコメントした。韓日経済協会会長キム・ユン氏は「ここ数年、両国企業間の大型プロジェクトは、諸事情により推進が難しかったが、これからは、改善が見込まれるので、事業の本格化に向け走り出したい」とし、日韓経済協会副会長の麻生泰氏も「日韓関係の改善が可視化されつつあり、難しい課題をこれから日韓経済関係者とともに議論しながら、解決していきたい」と述べた。

日韓首脳会談を巡り、一部で尹政権への評価が分かれるが、筆者は、何より日韓関係の改善を大事にした点と、難しい問題の解決に積極的に取り組んだ点を大きく評価したい。日韓は隣国であり、経済や科学技術、文化、安全保障問題、いずれも協力関係を保つことが重要である。日韓企業の交流推進により、経済協力もこれから一層活発になると思われるが、科学技術の交流や協力にも期待が高まる。

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