韓国のバイオ素材の最新情勢―韓国KOBIC ジン・テウン氏

2023年5月25日

ジン・テウン

ジン・テウン(Jin Tae-Eun, PhD):
国家生命研究資源情報センター(KOBIC) 責任研究員

韓国翰林大学校遺伝子工学科で理学士号・理学修士号、ドイツ・ハイデルベルク大学大学院生命科学部で博士号をそれぞれ取得。「大統領科学技術諮問会議(PACST)」事務局政策研究員などを歴任し、2012年から韓国生命工学研究院(KRIBB)国家生命研究資源情報センター(KOBIC)責任研究員として勤務。


序論・背景

バイオ素材の重要性を認識した主要国は、バイオ素材の先行的な確保と活用に努めており、韓国も2007年から関係省庁が合同で「国家生命資源確保・管理マスタープラン」を策定し、バイオ素材に対する国家レベルの管理について議論しており、2009年からは「生命研究資源の確保・管理および活用に関する法律」を含む関連法律を制定して、国家レベルでのバイオ素材の確保、管理・活用を促進し始めた。

こうした動きの中で、2012年に2175,802点だったバイオ素材は、2022年までには19,435,411点を確保して8.9倍増加し、分譲も2012年の445,831点から2022年の171,026点に約4倍増加した。2022年には3,211編の論文が発表され、307件(韓国285件、海外22件)の特許登録があった。さらに、素材資源バンクはバイオ研究および産業素材としての活用を促進するために、2,561件の技術支援を産業界(44.4%)、研究界(28.9%)、学界(21.6%)に提供した。

現在の推進内容

2020年「第3次国家生命研究資源管理・活用基本計画」を策定しながら、これまでのバイオ素材確保中心から活用中心に転換しており、これにより小規模、または短期課題で運営されている274カ所の素材資源バンクを素材の種類、保存方式、関連法律等に基づき、14分野(人体由来物、病原体、幹細胞、培養細胞、モデル動物、合成化合物、脳、天然物、微生物、畜産、種子、海洋生物、水産生物, 野生生物)にクラスター化し、分野別関係部署を中心に素材資源バンクを中央バンク-拠点バンク‐協力センター構造にネットワーク化した。

例えば、微生物分野は韓国科学技術情報通信部が担当省庁であり、レッドバイオ、グリーンバイオ、ホワイトバイオに活用される微生物を分野別に体系的に提供するために、レッドバイオ分野の韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)とグリーンバイオ分野の農村振興庁農業微生物バンク(KACC)を共同中央バンクに指定し、既存の分類学的研究だけでなく、プロバイオティック・農業微生物・環境低減微生物などを体系的に支援するために努力している。

韓国のバイオ研究者たちは、信頼できる品質のバイオ素材が分譲されることを希望しており、単にバイオ素材だけを提供するのではなく、研究現場で必要とする素材別特性情報(メタ・性能・効能・成分など)を提供することを望んでいる。

このような要求を反映して、韓国国家技術標準院では2022年「バイオバンクに関する一般要求事項」であるISO20387を韓国に導入し、2023年3月までに5つの素材資源バンクがISO20387の国内バージョンであるKS J ISO20387の認定(Accreditation)を取得した。今後、多くの素材資源バンクがKS J ISO20387の認定を取得できるように拡大する計画であり、これを通じて韓国の素材資源バンクが管理し分譲するバイオ素材に対する国内外の信頼度を高める計画である。

また、バイオ実物素材を確保して実物素材を分析した特性情報、効能情報をDB化し、これを素材分野別専門ポータルと(仮称)バイオ素材情報統合ポータルに二元化して、研究者が希望する素材の統合検索はバイオ素材情報統合ポータルで行い、分野別に特化した情報や分譲、分析サービスなどは専門ポータルを通じて推進する体系を構築し、研究者が希望するバイオ素材と情報を統合/比較検索して、希望する素材が関連特性情報と共に分譲/活用できるようにする計画である。

小論・今後の計画

バイオ素材は研究過程を通じて産出された結果物であり、最終産出物でありながら、研究および製品生産のための中間財的性格も有する両面的特性を持つ。したがって、一方通行方式の政策には限界があり、これにより政策の効果が半減する恐れがある。実際に、従来のバイオ素材分野の政策は量的確保中心に進められてきたが、「第3次国家生命研究資源管理・活用基本計画」と、それを履行するための事業である「多省庁国家生命研究資源先進化事業」の開始を機に、需要者中心のバイオ素材と情報を同時に確保・提供・活用する方向にパラダイムシフトが進められている。

今後、「第3次国家生命研究資源管理・活用基本計画」に基づき、使用者が望むバイオ素材を優先的に確保できるようにバイオ素材提供インフラを構築し、実物情報と共に、特性情報、薬物反応性情報など、付加的情報の提供が推進される計画である。また、バイオ素材の保存・管理・分譲などの手続きを標準化し、世界的レベルの品質管理(ISO)を導入するなどの取り組みが進められる計画である。

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