【AsianScientist】地下水の過剰採取が地球の自転軸に影響―ソウル大学校の研究者ら解明

調査結果から、過剰な地下水の汲み上げも海面上昇の原因であることが分かった。(2023年9月21日公開)

最近、多国籍の科学者チームが大量の地下水の移動によって引き起こされる地球の自転軸の変化を分析する研究を行ったところ、過剰な地下水の汲み上げは海面上昇に影響を与えるだけでなく、地球の地軸の傾きを引き起こしていることを明らかにした。この研究結果はGeophysical Research Letters 誌に掲載された。

質量が地球全体に分布する形状により、地球の自転軸(北極と南極を通る想像上の線) が移動したりぐらついたりすることがある。この現象は極運動と呼ばれる。極運動とは、コマに小さな重りを乗せると、そのコマの回転が変化するようなものである。20世紀に地球の温度が上昇した際にグリーンランドの氷が溶けて海に流れ込んだが、地球の地軸のぐらつきは、このような長期的なプロセスと関連している。

「地球の自転軸は、実際には大きく変化します」と、この研究を主導した韓国・ソウル大学校の地球物理学者であるキ・ウェオン・ソ (Ki-Weon Seo) 氏は述べ、「私たちの研究は、気候関連の原因の中で自転軸のドリフトに最も大きな影響を与えているのは、実は地下水の再分布であることを示しています」と付け加えた。

地下水は、帯水層と呼ばれる地表の下の多孔質の岩石に保持されている膨大な量の水である。人間は主に灌漑用水や飲料水として地下水を汲み上げてきた。しかし、汲み上げられた地下水の約80%は最終的に海洋に到達し、その結果、水は地球の大陸から広大な海洋に移動する。

水が地球の自転軸に影響を与えていることは2016年から知られていたが、地下水枯渇の具体的な影響は解明されていなかった。それを解明するために、ソ氏のチームは、1993年から2010年の間に観察された極運動をモデル化して水の動きを説明した。このモデルは氷床の薄化、氷河の融解、貯水池に蓄えられた水に関係している。

チームは、この期間中に汲み上げられた推定 2,150 ギガトンの地下水を含めなければ、モデルは東に 78.5 センチメートル、つまり年間 4.3 センチメートルずれることを発見した。この汲み上げられた地下水は海に流れ込むと考えられ、地球全体で6.24ミリメートルの海面上昇に相当する。

ソ氏は「自転軸の移動の原因は不明でしたが、それが解明できてとてもうれしいです」と語った。 「その一方で、地球の住人として、そして父親として、私は地下水の汲み上げが海面上昇の別の原因であることを知り、懸念し、驚いています」とも。

地球の極移動は通常、毎年数メートルであるため、地下水の枯渇が直接天候や季節に及ぼす影響はごくわずかである。しかし、地質学的な時間スケールで見ると、この軸の移動は気候にさらに大きな影響を与える可能性がある。ソ氏は、中緯度に位置する国々は自転軸に最も大きな影響を与えるため、改善された保全アプローチを採用し、維持してこの偏りを変えることができると述べた。

調査結果からさらに大きな懸念が生まれた。それは地下水が海面に与える影響である。海面が上昇するにつれ、海岸線は後退し、猛烈なハリケーンや台風の発生が急増する可能性があるため、人々は高地への移住を余儀なくされるかもしれない。持続が不可能になるほどに地下水を汲み上げれば、自然の流れの中で水量の減少につながり、繊細な水生生態系を破壊する可能性もある。

ソ氏は、極の移動が私たちの過去を探求し、気候変動の影響をより深く理解する上で将来のために価値あるものかもしれないと力強く述べた。

「地球の自転軸の変化を観察することは、大陸規模の水貯蔵量の変化を理解するのに役立ちます」とソ氏は述べ、「極移動データについては、19 世紀後半からのものを入手することができます。したがって、これらのデータを使用して、過去 100 年間の大陸水貯留量の変動を理解できるかもしれません。 気候温暖化を原因とする水文様相の変化はあったでしょうか? 極運動がその答えとなるかもしれません」と期待を込めた。

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