【AsianScientist】傍観者がジェンダーに基づく暴力を止めない理由

以前の暴力抑制の試みがうまくいかなかったことが、傍観者を思いとどまらせる理由の 1 つであることが研究から明らかになった。(2024年2月26日公開)

ジェンダーに基づく暴力 (GBV) の被害者は、心理的影響から深刻な身体的危害まで、壊滅的な結果を経験するが、GBVが人目のあるところで行われたならば、被害者は傍観者の助けを借りて危機から逃れ、助けを求めることができる。

傍観者は命を救うことができるかもしれない。それにもかかわらず、研究から、傍観者がGBV被害者に援助を申し出ることを妨げる障壁の存在が分かっている。1970 年の傍観者の行動に関する状況モデルから、傍観者は暴力を目撃している間にいくつかの段階を経ることが示されている。その段階とは、状況に気づくこと、それを問題として認識すること、責任を負うこと、行うべきことを決定すること、そして最後は加害者が罪を犯すのを防ぐために行動することである。

これらの各段階で傍観者が経験するかもしれない障壁の影響は、今まで十分に定義されていなかった。韓国の中央大学看護学部のシヒョン・パーク (Sihyun Park) 准教授は中心となって調査を行い、GBV時の傍観者の介入を抑圧する障壁を系統的に評価し、分析し、その結果をTrauma, Violence and Abuse誌に発表した。

パーク准教授は「傍観者がGBVを目撃するとき、介入を阻ませるいくつかの障壁が存在することは明らかです。傍観者の介入を改善するには、これらの障壁を特定し、介入しようとする傍観者に対する障壁の影響力を理解し、証拠に基づいた教育プログラムを開発して最も決定的な障壁に優先順位を付けることが重要です」と述べた。

チームは合計38件の研究から障壁を抽出し、6つの異なる領域に分類した。6つの領域とは気づかないこと、リスクとして認識しないこと、関与する責任を負わないこと、傍観者の能力の欠如、行動を起こさないことである。この分析には、2021年という比較的新しい研究で特定された障壁(傍観者は介入を試みたことがあったが失敗したため、GBVを阻止しようとする意欲が失われること)も追加された。

チームは次に領域固有の効果量 (ES) を計算し、傍観者の数、性別、GBV 状況の種類がES に及ぼす影響も調査した。

その結果、傍観者に介入を思いとどまらせる最も大きな障壁は、以前GBV介入に失敗したことから起こる否定的な感情であることが明らかになった。この感情は傍観者の間で多くみられるため、チームは今後の教育プログラムではこの要因への対応に特に留意する必要があると記載した。

この研究から、傍観者が介入に消極的になるのは近親者暴力よりも女性に対する暴力や性的暴行の場合であることが分かった。

チームが学術データベースの研究を調べたところ、既存の傍観者関連の文献では多様性に関する格差が存在することも分かった。主に白人、若者、高学歴の集団に焦点が当てられており、LGBTQIA+や有色人種などのマイノリティ集団における傍観者の介入を調査した研究はほとんどないか、まったくない。

さらに、パーク准教授のチームは、傍観者の意図や介入行動に対する文化的、世代的影響を調査することの重要性を強調した。

これらの所見をまとめると、今後の研究と効果的で的を絞った教育プログラムの設計に関する重要な指針の作成に役立ち、地域社会はGBVに積極的に対応できるようになる。

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