2024年7月2日 安 順花(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー)
2023年、韓国の研究開発(R&D)投資上位1000社によるR&D投資額は前年比5.8兆ウォン(8.7%)増の72兆5000億ウォンであったことが分かった。
韓国のR&D投資上位1000社のR&D投資額・増加率の推移
出典:韓国産業通商資源部
韓国産業通商資源部と傘下の韓国産業技術振興院(KIAT)は、2023年韓国国内R&D投資上位1000社を調査した「R&D投資企業スコアボード」を発表した。これによると、韓国の投資規模上位1000社のR&D投資額は2014年以降増加傾向を見せており、2023年には歴代最高の72兆5000億ウォンを記録した。
R&Dへの投資は主に大企業を中心として行われた。韓国の投資規模上位10社はR&Dに総額45兆5000億ウォンを投資しており、上位50社では総額56兆6000億ウォンを投資し、それぞれ上位1000社R&D投資額の62.7%、78.1%を占めた。2023年R&D投資上位1000社の売上高は2.8%減少し、売上高に占めるR&D投資額の割合は3.9%から4.4%へ増加した。
順位 | 企業 | 投資金額(億ウォン) |
---|---|---|
1 | サムスン電子 | 238,528 |
2 | 現代自動車 | 37,406 |
3 | SKハイニックス | 36,298 |
4 | LG電子 | 32,748 |
5 | サムスンディスプレイ | 27,560 |
6 | 起亜 | 26,561 |
7 | LGディスプレイ | 18,610 |
8 | 現代モービス | 16,398 |
9 | サムスンSDI | 11,097 |
10 | LGエネルギーソリューション | 9,280 |
11 | LG化学 | 9,166 |
12 | LGイノテック | 6,725 |
13 | ネイバー(NAVER) | 6,357 |
14 | サムスン電気 | 5,431 |
15 | カカオ(KAKAO) | 4,901 |
出典:韓国産業通商資源部
一方、R&Dに1兆ウォン以上投資した企業を見ると、サムスン電子、現代自動車、SKハイニックス、LG電子など9社である。とりわけ、トップのサムスン電子はR&D投資額上位2~10位企業の合計21兆6000億ウォンを上回る23兆9000億ウォン(全体の32.9%)を投資し、韓国のR&Dに多大な影響力を与えていることが改めて確かめられた。
投資上位1000社には、大企業171社、中堅企業491社、中小企業338社が含まれており、中堅企業では、ゲーム会社のNCソフト(4671億ウォン、17位)、韓国航空宇宙産業(4088億ウォン、19位)が、中小企業ではリガケムバイオサイエンス(797億ウォン、69位)がそれぞれR&D投資額が多かった。
順位 | 国 | 2022年企業数 (2021年時点) |
2022年R&D投資 (EUR bn) |
---|---|---|---|
1 | 米国 | 827(822) | 526.5 |
2 | 中国 | 679(678) | 222.0 |
3 | 日本 | 229(233) | 116.2 |
4 | ドイツ | 113(114) | 103.6 |
5 | イギリス | 95(95) | 35.8 |
6 | 台湾 | 77(84) | 26.2 |
7 | フランス | 54(57) | 31.6 |
8 | スイス | 52(55) | 37.3 |
9 | 韓国 | 47(53) | 37.0 |
10 | オランダ | 40(38) | 27.0 |
出典:「2023 EU Industrial R&D Investment Scoreboard」
しかし、グローバルからみると、韓国企業のR&D投資規模は依然として少ない。韓国のR&D投資上位1000社はここ10年間、年平均6.6%以上投資を拡大してきたが、2022年時点グローバルR&D投資上位2500社のうち、韓国企業は47社にとどまっている。米国(827社)、中国(679社)、日本(229社)、ドイツ(113社)に比べても少なく、台湾(77社)よりも少ない。さらに50位内にはサムスン電子(7位)1社のみである1。
産業通商資源部によると、2023年韓国のR&D投資上位1000社の投資額は2022年基準で中国679社の投資額の約4分の1、米国827社の投資額の約10分の1に過ぎないという。
韓国企業がグローバル市場、先端技術分野で勝ち残るためには、競争力の源泉となるR&Dに一層積極投資が求められている。