2021年04月
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アルツハイマー病の原因に迫る

アルツハイマー病の予測不能性の裏にはアストロサイト(星状膠細胞)という星型の脳内細胞の変化が一部関係している可能性があると韓国の研究者らが発見

AsianScientist - アルツハイマー病とその原因は、専門的に研究が開始されて数十年が経つにもかかわらず、そのほとんどが未だに謎に包まれたままである。最近になり、韓国の研究者らがアルツハイマー病の神経変性との関連性を示す重要な指標を見い出し、その研究結果をNature Neuroscience誌上で発表した。

アルツハイマー病は、ハリウッド映画『きみに読む物語(原題:The Notebook)』や『アリスのままで(原題:Still Alice)』等の作品においてその過酷な現実が描かれているとおり、認知症や、進行性の記憶喪失、またその他にも認知機能の低下が進行する症例が大多数を占める脳障害である。アルツハイマー病の原因に関しては、膨大な数の仮説が長年にわたり立てられてきた。

おそらく、最も有名な説はアミロイド仮説である。この説は、アルツハイマー病が進行する原因は脳内でベータアミロイド(beta-amyloid:Aβ)のプラーク形成にあるとしている。そのようなプラークは、細胞間のシグナル伝達を遮断し、場合によりそれが炎症を引き起こし、脳細胞の死に繋がる可能性まであるという。

興味深いことに、アルツハイマー病の一部の患者は、Aβプラークを除去した後でも神経変性を示し続けることを複数の研究が明らかにしている。さらに奇妙なことに、これに該当しない患者の場合、Aβが高値を示しながらも、認知障害の徴候がみられないのである。このような一見矛盾している結果は、この疾患にほかの因子が関わっていることを示唆している。

韓国・基礎科学研究院(Institute for Basic Science)と韓国科学技術研究院(Korea Institute of Science and Technology)の研究者らが、新たに動物モデルを使用して、アストロサイトという星型の脳細胞がアルツハイマーの予測不能性を理解する鍵となる可能性があることを明らかにした。

神経変性は概してアストロサイトのサイズや数を異常に増大させる。この研究チームは、アストロサイトの反応性の程度がアルツハイマー病の進行と連動していることを発見した。

チームは、交配した2系統のマウスを使用し、ジフテリア毒素感受性受容体を発現している群と、これらの受容体の発現をアストロサイトに限局化した群とに分けた。研究チームは、この新規マウスモデルへのジフテリアの用量をコントロールすることにより、アストロサイトの反応性を微調整して、アルツハイマー病患者で認められる病態を再現することを可能にした。

このプロセスでは、軽度の異常増殖を示すアストロサイトが反応性を自然に逆転させるうることが明らかになった。一方、高度に反応性を示すアストロサイトの場合、永続的な神経変性を引き起こし、30日以内に認知障害を発生させる。

また、軽度の反応性を示すアストロサイトの場合、酸素含有分子または酸化ストレスに過剰に曝されると、重度の神経毒性に相当するものへと転じる可能性があることも研究チームは示している。したがって、これらの分子を遮断すると、アストロサイトの反応性は減速した。

まとめると、進行したアルツハイマー病の患者がAβプラークの除去後でも引き続き症状を示す理由について、このチームの研究から妥当性のある説明が得られた。重度の反応性アストロサイトが認められると、神経変性はAβプラークの有無に関係なく不可逆的に動き出す。同時に、この研究から、Aβの大きな負荷がかかっていても神経変性や認知障害がみられない人が多いことの説明もつく。

論文の責任著者を務めるリュウ・フーン(Ryu Hoon)博士は「特に、アルツハイマー病の新たな治療戦略を構築する重要な段階では、早期に過度の活性化がみられる反応性アストロサイトをターゲットとすべきであることがこの研究から示唆された。また、そうするためにも反応性アストロサイトと早期アルツハイマー病の診断ツールの開発が必要となる」と結論づけている。

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