武装しているような堅固な外観が有名なアンキロサウルス科の恐竜は、地面を掘って地上の大型捕食動物から身を守っていたのかもしれない。
AsianScientist - モンゴルのゴビ砂漠で、ある研究グループがアンキロサウルス科の化石を発掘したことにより、装甲したこの恐竜には地面を掘る能力が備わっていた可能性があることが明らかになった。この研究結果は科学誌 Scientific Reports に発表された。
装甲をもった外見により、まるでポケモンの完全進化形に似ているが、アンキロサウルス科は白亜紀の8400~7200万年前にかけて生息していた実在の恐竜だ。幅のある巨大な体格にパワフルな短い足を持つこれらの恐竜は、特に皮膚を覆っているトゲ状に突出した骨と、骨を押しつぶすこともできるほど強い大きな尾錘(びすい:しっぽの意)によって知られている。
恐ろしい外観とは裏腹に、アンキロサウルス科の多くは草食性だった。彼らの重厚な装甲は、ティラノサウルス・レックスなどの地上の大型肉食動物から身を守っていた。そのような肉食恐竜は、装甲恐竜を横転させなければ、その唯一の弱点である下腹部に触れることはできなかった。
ただし、装甲はアンキロサウルス科が有していた唯一の防御策ではなかったかもしれない。ソウル大学校のリー・ヨンナム(Lee Yuong-Nam)教授の研究チームは2008年、ゴビ砂漠から発掘された標本の調査を行った。この調査を基に恐竜が掘削にも適していた可能性をうかがわせる解剖学的特性をいくつか報告した。
例えば、標本の前足の骨は浅い弧を描くようになっており、そのためアンキロサウルス科がやわらかい地面を掘ることができた可能性があることだ。後足はほかの恐竜に比べて骨の本数が少なく、これはアンキロサウルス科が地面を掘るときに安定性を与えるアンカーの役割を果たしていたのかもしれない。同様に、標本は中央の体の幅が広く前後が細い独特な体形をしていたが、このずんぐりとした形により、掘削中も身体を真っ直ぐに保てたようだ。
アンキロサウルス科の外敵からの防衛手段は、かがんだ体勢を取る方法だったと長く考えられてきたが、今回の研究が示すように自ら掘った浅い穴に身をかがめれば、肉食恐竜の攻撃で横転しにくくなり、足や弱点の下腹部を守ることにつながる。
著者らは次のように結論付ける。
「本稿で報告した解剖学的特性は、アンキロサウルス科が地表を掘る能力を備えていたとするエビデンスの十分な裏付けとなります。アンキロサウルス科はこの掘削能力によって食用に植物の根を掘ることが可能になり、地表下の水が出てくるまで掘ったり、現代のアフリカのゾウがしているように、ミネラル補給用の鉱物を探す目的で堆積物を深く掘ったりすることもできたとみられます」