2021年06月
トップ  > 韓国科学技術ニュース> 2021年06月

ナノ粒子の三次元原子構造の観察に成功 韓国研究チーム

韓国科学技術院(KAIST)は5月12日、同大学のヤン・ヨンス(Yang Yongsoo)教授らの研究チームが、ニューラルネットワークと原子分解能の電子線トモグラフィーを用いて、ナノ粒子の三次元原子構造を原子レベルで観察することに成功したと発表した。研究成果は、科学誌 Nature Communications に掲載された。

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は5月25日、アルツハイマー病とパーキンソン病の原因となるタンパク質の凝集体の構造を、4本の探針を用いた原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy: AFM)で観察する技術を開発したと発表した。研究は化学科のパク・ジュンウォン(Joon Won Park)教授とシン・ウンジ(Eun Ji Shin)博士候補が率いる研究チームによるもので、論文は2021年5月12日付でNano Lettersに掲載された。

ヤン教授のチームは原子レベルの分解能を持つ透過電子顕微鏡と原子性(atomicity)の概念に基づくディープラーニング手法により、白金ナノ粒子表面の三次元原子構造を15ピコメートル(水素原子の半径の3分の1の長さ)の精度で特定できることを示した。ディープラーニングネットワークによる拡張(augmentation)処理を用いて、傾斜角度の限界により情報が一部欠落する「ミッシングウェッジ(missing wedge)」という問題を軽減し、三次元原子構造の解析精度を約70%向上させた。

この技術により、燃料電池で利用される触媒特性等の、表面構造に大きく依存する機能特性を持つナノ材料の構造と特性の相関を、原子レベルで解析できるようになる。

ヤン教授は「三次元の原子構造をより高い精度で明らかにしたいと考えている。また、電子線トモグラフィー技術をさらに進化させ、原子構造だけでなく、ナノ材料の物理的、化学的、機能的な特性を三次元の原子スケールで測定することを目指している」と述べている。

この研究は韓国国立研究財団(National Research Foundation)とKAISTの国際研究プロジェクト「M3I3」から資金により実施された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る