韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は5月25日、アルツハイマー病とパーキンソン病の原因となるタンパク質の凝集体の構造を、4本の探針を用いた原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy: AFM)で観察する技術を開発したと発表した。研究は化学科のパク・ジュンウォン(Joon Won Park)教授とシン・ウンジ(Eun Ji Shin)博士候補が率いる研究チームによるもので、論文は2021年5月12日付でNano Lettersに掲載された。
ヘテロオリゴマーの四重フォースマッピングの模式図。ヘテロオリゴマーは4本のAFM探針で特徴付けられる。(図提供:POSTECH)
アルツハイマー病とパーキンソン病の間にみられる病理的な重なりは、アミロイドβとαシヌクレインという2種類のペプチドが凝集した「ヘテロオリゴマー(hetero-oligomer)」に関係するといわれている。既存の技術ではこの凝集体の構造を観察することが困難であり、治療法開発の妨げとなっていた。
本研究ではアミロイドβとαシヌクレインのN末端とC末端をそれぞれ認識する4本のAFM探針を用いて観察を行い、これらの物質から成る凝集体の構造的特徴を1分子レベルで特定することに成功した。
このような「四重フォースマッピング」によりナノ凝集体の構造を観察した研究は初めてである。ヘテロオリゴマーに関する仮説を検証するための根拠となるほか、他の神経変性疾患の重なりも解明できる可能性がある。
パク教授はこの技術について「他のアミロイドタンパク質の凝集体にも応用でき、アルツハイマーや狂牛病等の疾患の原因解明に役立つ」と話している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部