新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、韓国における川崎病の発症率は大幅に減少しており、これはマスク着用、手洗い、物理的距離を置くなどのパンデミック予防の取り組みによるものである可能性があることが韓国の研究チームによって明らかになった。研究成果は6月7日付で、米国心臓協会の学術誌Circulationに掲載された。
川崎病は、小児らに発症し、血管、特に心臓の動脈に炎症を起こす心臓病の原因とされている。川崎病はアジア系の子供に多く見られるが、人種や民族を問わず発症する。韓国は川崎病の発症率で、日本に次いで世界で2番目に高い国である。
韓国の研究者らは、COVID-19の予防の一環で、マスク着用やソーシャルディスタンスを保つことが川崎病に与える影響を分析した。韓国では、2020年2月以降、COVID-19の症状がある人に対して、厳格なマスク着用、定期的な学校閉鎖、物理的な距離の取り方、頻繁な検査と隔離が義務付けられている。
研究者らは、COVID-19の予防活動が盛んに行われた2020年2月から2020年9月までの間と、COVID-19以前の川崎病の発生率と比較した。分析の結果、2020年2月にCOVID-19の予防活動が実施された後、川崎病の患者数はCOVID-19以前に比較して約40%の水準まで減少した。2020年以前の2月から9月までの川崎病の平均患者数は10万人当たり31.5人であったのに対し、COVID-19パンデミック中の2020年の同じ月の川崎病患者数は同18.8人であった。最も患者数が減少した年齢層は9歳までの小児で、10歳から19歳では減少は確認されなかった。この減少傾向は、マスク着用、手洗い、学校閉鎖、ソーシャルディスタンスによるものと考えられ、川崎病が感染因子によって促されている可能性を示唆した。
研究代表者である延世大学医学部セブランス病院准教授のヨング・ギュン・アン (Jong Gyun Ahn)医師(医学博士)は今回の結果について、「川崎病の発症に環境要因が影響を与えている可能性を示すものである。医薬品以外の介入を実施した後に川崎病の発症率が低下したことは非常に明確であり、他の独立した介入が偶発的に関与したとは考えられない」とし、「COVID-19による広範かつ集中的な予防介入は、これまで川崎病の誘因として示唆されてきた呼吸器感染症の発症率を低下させるという追加の効果もあった」と話している。
米国心臓協会のジェーン・W・ニューバーガー(Jane W. Newburger)博士は、今回の研究結果が、川崎病は遺伝的感受性の高い人が環境中のウイルスやその他の感染物質にさらされたときに引き起こされる免疫反応であるという仮説と一致すると指摘した。川崎病の原因は不明だが、急性の感染症に対する免疫反応の可能性があるといえる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部