2021年07月
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ハエの研究でタンパク質への欲求を解明 韓国の研究者ら

タンパク質が不足すると、腸内で特殊なホルモンが分泌され、必須アミノ酸を含む食べ物を食べるよう脳に伝達することが解明された。

AsianScientist - 突然、肉や乳製品を食べたくなったことがある人は、腸内の細胞が脳にタンパク質不足を伝えていた可能性が高いと韓国の研究者らが明らかにした。この研究結果は、科学誌 Nature に発表された。

ファスティング、ケト、あるいは流行のダイエット法に夢中になっている人もいるが、すべての生物が正常に機能するためには、炭水化物、タンパク質、脂肪をバランスよく摂取する必要があるという事実に変わりはない。これらの生体分子は、我々にエネルギーを供給するだけでなく、それらもまた、細胞の修復やホルモンの生成などあらゆる面で重要な役割を果たす要素から構成されている。

韓国科学技術院 (KAIST) のグレッグ・ソン・ペ・ソ(Greg Seong-Bae Suh) 教授 は「十分なカロリーを摂取するだけでは効果はありません。ダイエットでは、タンパク質が不足するとクワシオルコルなど重度の栄養失調に陥る可能性があります」と説明する。

タンパク質の摂取量が不足すると生物がタンパク質や必須アミノ酸を多く含む食品を欲することは科学者の間で以前から知られていたが、生化学的な裏付けはまだ解明されていなかった。この欲求を科学的に調査するため、ソ教授はソウル大学校 のイ・ウンジェ (Lee Won-Jae)教授 と共同で、タンパク質が不足したハエにおける、食べ物の好みに対するさまざまな遺伝子の影響を調査した。

この結果、ハエからタンパク質を奪うと、腸内にある細胞がCNMアミド (CNMa) と呼ばれるホルモンを分泌することを発見した。これまでは、腸細胞と呼ばれるこれらの細胞が独占的に食物を消化し吸収するものと考えられていた。

しかし、腸細胞は、CNMaなどの神経ペプチドを介して体内の栄養状態や栄養不足を脳の神経細胞の受容体に伝えることができる。その結果、卵、魚、肉といった必須アミノ酸を含む食品が突然食べたくなるのである。

興味深いことに、研究チームは、Acetobacter (アセトバクター) バクテリアのような特定の腸内細菌が、軽度のタンパク質不足を補うために一時的にアミノ酸を生成することも発見した。バクテリアによって供給されるこの基本レベルのアミノ酸は、CNMaの分泌速度を変化させ、より多くのタンパク質を含む食品を求めるハエの欲求を抑える。

CNMaが脳の受容体とどのようにコミュニケーションをとるのかを解明するにはさらなる研究が必要だが、チームの研究では、ハエからヒトにいたるまで、なぜ生物はこれほどタンパク質を好むのか、そしてそのタンパク質がすべてなくなったとき何が起きるのかについての、最初の洞察が提示されている。

「ハエという単純な生物を研究対象に選んだのは、主要な栄養センサーの特定と特徴づけを容易にするためです。すべての生物には欲求があるので、ハエで特定された栄養センサーと神経経路は哺乳類にも当てはまります。今回の研究は、代謝性疾患や摂食障害の原因に関する理解を大きく前進させるものとなるでしょう」

ソ教授はこのように期待する。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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