韓国科学技術院(KAIST)は6月9日、代謝工学と膜工学の手法を用いて改変した大腸菌の菌株から、虹のスペクトルに含まれる7色の色素を作ることに成功したと発表した。微生物から7色の色素を生産したのは初めてであり、合成着色料に代わる安全な着色料としての利用が期待される。研究成果はオンラインジャーナルAdvanced Scienceに掲載された。
写真提供:韓国科学技術院(KAIST)
食品や化粧品で使用されている石油を原料とする合成着色料は、人体や環境への悪影響が懸念されている。微生物を使用した天然着色料への需要は高まっているが、生産コストの高さや生産性の低さが課題となっていた。
そこでKAIST化学・生体分子工学科の研究者らは、微生物の代謝を改変する統合的技術であるシステム代謝工学(systems metabolic engineering)の手法を使用し、赤、橙、黄のカロテノイドと、緑、青、藍、紫のバイオラセイン誘導体を生産した。さらに、細胞形態を改変し、内膜小胞(inner-membrane vesicles)という球状の膜構造を生成することで細胞内に色素を蓄積する能力を高め、効率的な生産を可能にした。緑色と藍色の天然色素を生産したのは初めてとなる。
研究者チームのヤン・ドンス(Yang Dongsoo)博士は、石油由来の合成着色料に取って代わる7色の天然色素の生産に初めて成功したと今回の研究の意義を強調した。また、今回の研究で開発された手法は、自然原料を使用した医薬品や栄養補助食品の生産にも利用できる可能性があるという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部