韓国科学技術院(KAIST)は6月21日、経済的に豊かな都市ほど、緑地の面積が人々の幸福度に大きく影響するという研究結果を発表した。
(a) 60カ国に見る都市の緑地面積度 (UGS)と幸福度(Happiness)の図。○のサイズと色はそれぞれの度数の大きさを表す。
(b) UGSで算出された都市の緑地面積。(左から)ドバイ(UAE)、アテネ(ギリシャ)、アムステルダム(オランダ)、トロント(カナダ)
(イラスト・写真提供:KAIST)
公園や庭園、河川沿い等の緑地は好ましい景観を作るだけでなく、身体的活動や社会的な交流を促進することで健康にも良い影響を与える。都市の緑地と幸福度の相関に関する先行研究の大部分は少数の先進国のみを対象としたものであったため、緑地による影響が世界共通なのか、対象国の経済状況による現象なのかを判別することが困難だった。
今回の研究では、欧州宇宙機関(European Space Agency)が運用する高解像度の観測衛星「Sentinel-2」が収集したデータを使用し、世界の60カ国において、国の人口の10%以上が集中する都市を対象に、90カ所の緑地を調査した。
この画像から算出した緑地面積と、世界幸福度(World Happiness Report)による幸福度スコアと国連が発表した2019年の国内総生産(GDP)を用いて緑地、経済、市民の幸福度の関係を分析したところ、国の経済状況に関わらず全ての都市で、市民の幸福度は都市の緑地面積(urban green space)と正の相関関係にあった。ただし、GDPが高い国では、経済成長よりも緑地面積が幸福度を高める大きな要因となっていた一方、GDPの下位30カ国では、幸福度は経済成長とより強く相関していた。
著者らは、都市の住民が公共の緑地を利用できるようにし、ソーシャルサポート(周りの人々から得られる支援)を向上する等、今回の研究結果を政策に反映するためのいくつかの方法を提案している。また、将来の気候変動が緑地維持に与える影響を考慮する必要があるとも述べている。
研究者の一人であるKAISTコンピューティング学部のチャ・ミヨン(Cha Mee young)教授は、今回開発した手法を用いて、湖や海岸等の水環境と幸福度の相関を調査することも可能だとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部