韓国の大邱慶北科技大学校(DGIST)とインドの研究者らは6月15日、デンプンから作られた化合物を使って、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換することに成功したと発表した。研究成果は、学術誌Advanced Functional Materialsに発表された。
この発明により構想される摩擦帯電式のナノ発電は、費用対効果と生体適合性に優れるため、電卓や時計などウェアラブル型で低エネルギーの電子機器の充電方式への応用が期待される。
ホ・ジュン・キム 助教(左)ら研究チーム (写真提供:同助教)
DGISTの助教でロボット工学者であるキム・ホ・ジュン(Kim Hoe Joon) 氏 は、従来の摩擦帯電型ナノ発電について、「機械的エネルギーを集めて電流に変換する。これらのデバイスに使用されている材料の多くは人体に有害であるとされており、ウェアラブルな応用には適していない」とし、「私たちの摩擦帯電型ナノ発電は、人体へのドラッグデリバリーに広く使用されているグリーン材料であるシクロデキストリンから成るため、環境に優しく、人体にも危険性のないものとなっている」と特徴を語る。
シクロデキストリンは、デンプンから生成される多糖類の化合物である。科学者らは、このシクロデキストリンとナトリウムを用いて、金属有機物構造体 (MOF) を作成した。MOFは、ガスの貯蔵、触媒、センシングなどに広く使われている多孔質材料である。研究チームは、このMOFを、ポリエチレンテレフタレート (PET) シートに貼り付けられた銅電極にコーティングし、ナノ発電機に組み込んだ。一方で、別のPETシートに貼り付けられた第2の銅電極にはテフロン層を設けた。この2つの構造体をナノ発電機内に平行に配置することによって、歩行やジョギングなどの動きに応じてMOF層とテフロン層が接触するたびに電子が交換され、電流を発生させることができる。
研究チームは、このデバイスを靴やバックパック、膝、腹部に取り付けてテストした。その結果、歩いたり、ジョギングしたり、体を曲げたり、さらにはヨガの動きからも機械的エネルギーを得ることができ、デジタル腕時計、比重計、電卓などの低消費電力の電子機器を動かすことができた。
研究チームは、ウェアラブルな用途に使用できる生体適合性の高い材料を今後も探していく予定だ。また、ナノジェネレータで生成したエネルギーを蓄えることができるスーパーキャパシタの開発にも取り組んでいる。
「ナノジェネレータとスーパーキャパシタを併用することで、ウェアラブルエレクトロニクス、バイオデバイス、ロボットなどの次世代エネルギーシステムを開発できると考えている」とキム氏は展望した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部