韓国科学技術院(KAIST)は7月5日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で回復期の大分部の患者において、重症度を問わず、10カ月以上にわたってT細胞の記憶が維持されるとの研究結果を発表した。さらに、メモリーT細胞が同種の抗原(cognate antigen)に出合った後、急速に増殖し、多機能的な役割を果たすことも明らかになった。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に特異的なT細胞が回復後も長期間持続すると示されたことは、効果的なワクチン戦略の手がかりとなる。研究結果は科学誌Nature Communicationsに掲載された。
メモリーT細胞は適応免疫記憶を維持し、新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐうえで重要な役割を果たすが、SARS-CoV-2に特異的なメモリーT細胞の寿命や機能維持についてはこれまで解明されていなかった。
KAISTの医療科学・工学大学院の免疫学・感染症研究所シン・ウイチョル(Shin Eui-Cheol)教授らは、長期的な免疫の形成に重要な役割を果たすと考えられる幹細胞様メモリーT細胞(stem cell-like memory T cell)の特性と機能について、最先端の免疫学的手法を用いて研究した。
本研究は、COVID-19から回復した患者の長期的な免疫が、ワクチン開発の目標の1つでもあるT細胞の免疫の長期的な持続に関する指標になることを発見し、現在使用されているワクチンの長期的な有効性を評価した点で重要である。
グラフ提供:KAIST
研究チームは現在、ワクチン接種者におけるメモリーT細胞の形成を確認し、ワクチン接種者と回復患者のメモリーT細胞を比較してワクチンの免疫効果を検証するための追跡調査を実施している。
シン教授は本研究について、COVID-19の回復期患者におけるメモリーT細胞の分化と機能を研究した縦断研究としては世界で最も長期間にわたるものであるとし、「次世代のワクチン開発の基礎を築いた」と意義を強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部