韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は7月8日、甲状腺にできる結節(結節性甲状腺腫)の良性と悪性を判定するために、光音響(photoacoustic: PA)画像技術と人工知能(AI)を組み合わせた非侵襲的な検査技術を開発したと発表した。同校の電気工学科キム・チュルホン(Kim Chulhong)教授らと、カトリック大学ソウル聖母病院(Seoul St. Mary's Hospital of Catholic University of Korea)、釜山大学校(Pusan National University)の研究者らによる共同研究の成果であり、論文は医学誌Cancer Researchに発表された。
患者の甲状腺(Thyroid gland)の腫瘍(Tumor)や結節にレーザー光(Light)を照射するイメージ図
(イラスト提供:POSTECH)
結節性甲状腺腫の良性・悪性の診断には超音波画像を用いた穿刺吸引細胞診が用いられるが、約20%の確率で不正確さが生じ、患者が繰り返し検査を受けなければならないことが問題となっていた。
本研究では、悪性の結節性甲状腺腫を持つ患者23名と良性の結節性甲状腺腫を持つ患者29名の結節にレーザーを照射し、甲状腺と結節から発される超音波信号(PA信号)を処理することで光音響(PA)画像を取得した。
さらに、悪性腫瘍の酸素飽和度が通常の結節よりも低いことに注目し、マルチスペクトルのPA信号を基に結節部位の酸素飽和度を算出した。これらのデータをAIの機械学習技術で解析し、結節が悪性か良性かを自動的に判定することに成功した。
その結果、良性の結節を良性であると正しく判定できる確率が、超音波を用いた従来の診断方法と比較して3倍以上向上した。これにより過剰診断や不要な検査の回数を大幅に減らし、医療費を削減できる可能性がある。
キム教授は本研究について、「結節性甲状腺腫の光音響画像を取得し、機械学習を用いて良性と悪性を分類することに初めて成功した点で意義がある」と語った。この技術は甲状腺がんだけでなく、乳がんなど他の部位のがんにも使用できる可能性があるという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部