韓国の漢陽大学校(Hanyang University)は7月12日、1型糖尿病患者に対する膵細胞移植の効果と安全性を向上できる可能性のある「細胞ケージング(cell caging)」という技術を開発したと発表した。研究成果はオンライン版 Science Advances に発表された。
この技術は漢陽大学校バイオエンジニアリング学科のイ・ドンユン(Lee Dong-yun)教授がソウル大学校(Seoul National University)のファン・ソクヨン(Hwang Seok-yeon)教授らと共同で開発したもので、酵素を用いた生体高分子(biopolymer)の架橋(cross-linking)により細胞表面にナノフィルムを形成する。
1型糖尿病患者への膵細胞移植に広く使用されてきたアルギン酸のカプセルを用いた方法は、カプセルの厚みが原因で、血糖値が感知されインスリンが分泌されるまでに時間を要する。さらに免疫反応により、線維化が生じるリスクもある。
こうした問題を解決するため、研究チームは非常に薄いナノフィルムを用いて速やかなインスリン分泌を可能にする技術を開発した。このナノフィルムを利用してマウスの膵臓細胞を1型糖尿病マウスの腎臓に移植した実験では、血糖値が効果的に抑制された。この技術は異種移植や幹細胞を用いた疾患治療にも利用できると期待されている。
チームは韓国研究財団(National Research Foundation of Korea)等の支援を受けてこの技術の実用化を目指している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部