韓国科学技術院(KAIST)は7月13日、同大学のパク・ソンジュン(Park Seongjun)教授らが、ハイドロゲルを用いて、従来よりも長期間使用可能な「ブレイン・マシン・インターフェース(brain-machine interface)」を開発したと発表した。研究成果は科学誌Nature Communicationsに掲載された。
脳に刺激を与えて信号をリアルタイムで検出するインターフェースの開発は、脳の構造の研究や神経疾患の治療において重要と考えられている。だが、既存のインターフェースは、脳組織との化学的、力学的な差異によって生じる異物反応により、長期間の使用が困難であった。
この問題に対処するため、研究チームは、複数の機能を持つファイバー束をハイドロゲルの本体に挿入し、「脳を模倣した」インターフェースを開発した。このデバイスは、神経細胞に対する光遺伝学(optogenetic)操作を行う光ファイバー、脳の信号を読み取る電極束、薬剤を脳に運ぶマイクロ流体チャネルで構成される。
このインターフェースは乾燥状態では固体であり、体内に容易に挿入できる。だが、いったん体内に入ると、体液をすばやく吸収して周囲の組織と似た性質を持つようになるため、異物反応を最小限に抑えることができる。
このデバイスを動物モデルに使用した実験では、従来よりも大幅に長い6カ月間にわたって神経信号を検出できた。さらに既存のデバイスと比較して異物反応が有意に減少したという。
パク教授は研究の意義について「多機能な神経インターフェースプローブの材料としてハイドロゲルを初めて使用し、インターフェースの耐用期間を劇的に延ばしたことにある」とし、今後、アルツハイマー病やパーキンソン病等の長期的な観察を要する神経疾患の研究に生かされることに期待を表明した。
KAISTが開発した「ブレイン・マシン・インターフェース」のイメージ(提供:KAIST)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部