2021年09月
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生体機能に近い人工肝臓を開発 漢陽大学校

韓国の漢陽大学校(Hanyang University)は7月19日、医学部外科のチェ・ドンホ(Choi Dong-ho)教授の研究チームが人間の肝臓の構造を模倣し、生体機能にきわめて近い機能を持つ人工肝臓を作成したと発表した。

この研究は釜山大学校(Pusan National University)や韓国がんセンター病院(Korea Cancer Center Hospital)の研究者と共同で行われ、研究成果は生体材料・システム工学界の学術誌Biomaterialsのオンライン版に掲載された。

韓国では急性肝不全、肝硬変、肝臓癌などの肝疾患による死亡率が高い傾向にあり、特に40代の男性で最も高くなる。これらの疾患の有効な治療法である肝臓移植には、ドナー不足や移植拒絶反応などの制約がある。ブタの肝細胞等を用いたバイオ人工肝臓(bioartificial liver)も世界各国で研究されているが、生体外では肝臓の機能が失われる点や、肝臓の構造を模倣することが困難な点が課題となっている。

本研究では、チェ教授の研究チームが患者の肝組織から肝細胞を抽出して生体外で増殖可能な前駆-幹細胞(precursor-stem cells)を作成した。その後、釜山大学校のパク・ソクヒ(Park Seok-hee)教授の研究チームが、電界紡糸ファイバー(electrospun fiber)シート上でこの細胞を培養した。

作成された人工肝臓は、従来の2次元培養法で培養した場合に比べて機能が10倍改善し、生体内の幹細胞に似た特性を持つことが確認された。さらに、肝障害を持つ動物モデルに移植した際、生存率が20%上昇した。

チェ教授はこの人工肝臓形成技術について、「臨床肝臓移植に置き換わる有望な方法となり得る」といい、論文の第一著者であるキム・ヨハン(Kim Yo-han)博士も、「各患者に合わせて人工肝臓を作成するようになれば、ドナー不足や移植拒絶反応の問題を解決できる」と肝臓移植の代替技術への期待を表明した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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