韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は、レーザーを時系列的に照射するナノ粒子トラッキング解析(nanoparticle tracking analysis: NTA)システムを用いて、細胞外小胞(extracellular vesicles: EV)を粒子レベルで観察したと発表した。7月20日付の発表。研究成果は学術誌 ACS Nano に発表された。
POSTECH機械工学科のパク・ジェソン(Park Jaesung)教授らが率いる研究チームは、個別のEVの大きさとタンパク質発現を特定するための、蛍光を用いたNTAシステムを開発した。4つの異なる波長を持つシート状のレーザーをプログラムした時間通りにEVに照射することで、3種類の蛍光画像が間に挿入された散乱画像を取得し、数千個の粒子の個々の大きさ、比率、散乱光を観察できる。
チームはこのNTAシステムを用いて、生体ナノ粒子であるEV(エキソソーム)に存在する特異的なタンパク質の分布を個々の粒子レベルで特定し、タンパク質同士の相関関係を解析した。
このNTAシステムを用いれば、ナノ粒子の観察と解析を同時に行い、ナノ粒子の個別又は全体の定量的データを迅速に取得できる。今後、細塵(ファインダスト)の環境モニタリング、生体ナノ粒子によるウイルス研究、体液中のナノ粒子の解析による疾患の診断やモニタリング等の用途に利用できる可能性がある。
このシステムはさまざまな産業やエキソソームに関する研究の進歩に役立つことが期待される。チームはエキソソームの研究開発や利用を手掛ける 企業「エキソソームプラス(ExosomePlus)」の支援を受け、この技術の商用化を目指している。
提供:POSTECH
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部