韓国の高麗大学校(Korea University)の研究者が、バイオマスまたは廃棄物を原料とする多孔質炭素(porous carbon)の二酸化炭素(CO2)吸着性を予測する、世界で初めての人工知能(AI)モデルを開発した。7月19日の発表。研究の成果は、環境分野で権威のあるアメリカ化学会(ACS)の学術誌Environmental Science and Technology (ES&T)に掲載され、表紙画像(supplementary cover)も飾った。
カーボンニュートラルの実現に向け、バイオマスや廃棄物をアップサイクルして価値を高めたバイオ炭や多孔質炭素等の材料が注目を集めている。特にCO2を吸着する性質を持つ多孔質炭素は、CO2回収・貯留(carbon capture and storage:CSS)技術の主要な材料になると期待されている。しかし、バイオマスや廃棄物を材料とする多孔質炭素はさまざまな構造的特性を持ち、温度や圧力の条件もそれぞれ異なるため、CO2吸着性を正確に予測することが困難であった。
高麗大学校・環境科学環境生態工学研究科のオク・ヨンシク(Ok Yong-sik)教授らは、シンガポール国立大学(NUS)のワン・シャオナン(Wang Xiaonan)教授らAI研究者と共同で、世界で出版された76の論文から632のデータセットを抽出し、機械学習ベースのアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは優れた予測能力を示し、独立したデータセットを用いたテストでも性能が実証された。
オク・ヨンシク教授は「このアルゴリズムを用いて、さまざまな種類の廃棄物を原料とする多孔質炭素材料のCO2吸着をより正確に予測し、吸着のメカニズムを解明したい」とし、「商用化を目指し、実世界の大量生産工程で生産した多孔質炭素にこのモデルを適用する研究」に引き続き取り組むと述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部