韓国の浦項工科大学校(POSTECH)とニュージーランドのオタゴ大学の研究者による共同研究チームは、人間サイズの臓器を作製するための、毒性が少なく細胞適合性に優れたバイオインクを開発した。8月20日に発表した。この技術は臨床試験に利用できる可能性がある。研究の成果は学術誌 Advanced Functional Materials に発表され、表紙画像にも採用された。
バイオインクは、3Dまたは4Dプリンティングを用いて組織や細胞を作製するバイオプリンティング技術で用いられる。この技術では、印刷後の細胞を保護し、細胞の生存を保つ環境を作ることが鍵となる。
これまで研究されてきたバイオインクは細胞外マトリックス環境の特定の構成要素のみを使用しており、生体内の生化学的微小環境を再現するうえで制約があった。また、紫外線光開始剤による毒性や細胞の損傷も問題となっていた。
そこで本研究では、細胞外マトリックス内でのチロシンの結合を促進することにより、光活性型の細胞外マトリックスバイオインクを開発し、柔軟性の高い3次元構造を作成することに成功した。従来のバイオインク材料と比べて細胞毒性が少なく、細胞外マトリックスの機能を維持しながら異なる構造を作成できる。このバイオインクを用いて角膜と心臓を作製したところ、非常に優れた組織再生能力を発揮したという。
POSTECHの研究チームを率いたコンバージェンスIT工学科・機械工学科のジャン・ジナ(Jang Jinah)教授は「この技術は再生医療への応用に向けた新たな道を開く」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部