韓国の浦項工科大学校(POSTECH)化学科のチャン・ヨンテ(Chang Young-Tae)教授らは、蔚山大学病院(Ulsan University Hospital)と共同で、生きた好中球を特異的に識別し画像化する初めての蛍光プローブ「NeutropG」を開発した。9月14日に発表した。研究の成果は学術誌 Angewandte Chemie に掲載された。
蛍光プローブ「NeutropG」のイメージ (提供:POSTECH)
蛍光プローブは、光信号を用いて特定のイオンや物質の存在を指し示す技術である。白血球の55~70%を占める好中球を生きた状態で特定することは、感染症や炎症の診断や治療法の発見において重要と考えられている。
顆粒球の中から好中球を区別するための小分子ベースの蛍光プローブはこれまで開発されていなかった。特定の細胞の識別には抗体が有用であるが、細胞膜透過性が低い抗体は、細胞内のバイオマーカーを特定する能力に制約がある。
研究チームは、細胞膜透過性が比較的高い低分子蛍光化合物を用いることで、抗体のこうした欠点を克服することを試みた。「NeutropG」は、脂肪滴の生合成(lipid droplet biosynthesis)を通じて、従来の生細胞識別手法とは異なるメカニズムで好中球を選択的に標識する。
チームは、NeutropGを用いて好中球の食作用を観察し、染色が長時間安定し、好中球の本来の機能に大きな影響を与えないことを確認した。さらに、NeutropGを用いて健康な好中球を選択的に染色し、新鮮な血液検体内の好中球数を正確に測定することに成功した。
チャン教授はNeutropGについて「血液検体内の生きた好中球を特異的に識別し、画像することに初めて成功した。代謝指向型の生細胞識別法は、健康な好中球を選択的に特定できる強みがある」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部