2021年10月
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分泌タンパク質の状態を動的に捉える手法開発 KAIST

韓国科学技術院(KAIST)の研究チームは、組織特異的な分泌タンパク質の時空間的な変化を動的に捉える手法を開発し、生きたマウスを用いて実証した。9月14日に発表。研究の成果は9月1日に科学誌 Nature Communications に掲載された。

生きたマウスを用いて実証のイメージなど(提供:KAIST)

血中に放出される分泌タンパク質は臓器間のコミュニケーションを媒介する物質として生理系で重要な役割を果たし、疾患のバイオマーカーや治療標的として用いられる。

先行研究では培養モデルの条件培地を分析して細胞タイプに特異的な分泌タンパク質を同定していたが、こうした培養モデルは、複数の臓器を含むシステムの複雑な状態を正確に再現することが困難であった。

KAISTの代謝・肥満・糖尿病総合研究所のソ・ジェミョン(Suh Jae Myoung)教授らは「TurboID」等の近接依存性標識(proximity-labeling)酵素を用いて、小胞体内腔の分泌タンパク質をビオチンで標識し、濃縮して質量分析法で同定する方法を開発した。

研究チームは、アデノウイルスを介して生きたマウスの肝臓にTurboIDを送達し、ビオチンを投与した後、マウスの血漿から肝臓由来の分泌タンパク質のみを検出することに成功した。

論文筆頭著者でKAISTの医学・工学大学院生のキム・クァンウン(Kim Kwang-eun)氏は、「肝臓から分泌されたタンパク質は、細胞培養モデルから得た結果と大きく異なっていた」とし、「この技術は培養モデルの制約を克服し、生理学的状態を正確に反映したバイオマーカーや治療標的の研究に役立てることができる」と期待を込めた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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