韓国の基礎科学研究院(IBS)の研究チームが、尿素酸化反応を用いて水素を生産するための、高担持率で安定性の高い単原子触媒(single-atom-catalysts)を開発した。10月13日に発表した。この研究の成果は学術誌 Energy & Environmental Science にオンラインで公開された。
(提供:IBS)
尿素酸化反応は、水の電気分解よりも小さい作動電位でグリーン水素を生産し、水質汚染を引き起こす尿素を有効利用できる手法として期待されている。しかし、貴金属を用いた従来の触媒は高価で、長期的な性能に問題がある。また、ナノ粒子触媒よりも高性能な触媒として注目されている単原子触媒は、表面の原子が移動しやすいため、金属担持率(metal loading)が低く、規模拡大が困難とされていた。
IBSの統合ナノ構造体物理学研究センター(Center for Integrated Nanostructure Physics)のイ・ヒョヨン(Lee Hyoyoung)副所長が率いる研究チームは、液体窒素急冷を用いて担持材料に表面ひずみ(surface strain)を与えることにより、単金属サイト(single metal atom sites)の担持率を大幅に高めることに成功した。
イ副所長は、「この酸化コバルト(Co3O4)に固定したロジウム単原子は、アルカリ性媒体と酸性媒体の両方で、従来の白金/炭素(Pt/C)やロジウム/炭素(Rh/C)よりはるかに優れた尿素酸化反応活性を示した」と語った。
この新しい触媒は従来の白金触媒やロジウム触媒よりも低い電位で同等の電流密度を達成した。また、100時間経過しても構造が変化せず、優れた長期的安定性を示したという。
イ副所長は、「この研究成果は、炭素を排出せず、エネルギー効率の高い水素社会の実現につながる」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部