韓国科学技術院(KAIST)は10月22日、同院の研究チームが、キラリティ(鏡像異性)を分子スケールからマイクロスケールへと移動させ、短波長赤外線領域で光学活性を示すキラル新材料を合成したと発表した。この研究の成果は9月14日に学術誌 ACS Nano に掲載された。
(提供 KAIST)
これまで開発されたキラルナノ材料は、短波長赤外線領域よりも波長が短い領域で光学活性を示すものであった。ナノ材料からこのような広範囲のキラル光学活性(chiroptical activity)を得た研究はこれが初めてであり、バイオ、通信、イメージング技術等、様々な用途に活用できる可能性がある。
研究を率いた材料科学・工学科のヨム・ジヒョン(Jihyeon Yeom)教授は、「システインを安定剤として用いてキラルな硫化銅を合成し、自己集合(self-assembly)を通じて分子スケールからマイクロスケールへとキラリティを移動させた 」と説明する。
研究チームは、ナノ粒子間の引力と斥力を調整することにより、キラルナノ粒子の自己集合を誘導した。このプロセスにより、システインの分子のキラリティがナノ粒子へと移動し、さらに、自己集合により形成された花状ナノ構造(nanoflower)のマイクロメートルサイズのキラリティへと移動した。
ヨム教授は、「光学活性の波長領域を短波長赤外線領域へと拡大し、体内のさまざまな情報を保存できるバイオバーコード(bio-barcode)として日常生活に活用したい」 と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部