韓国の基礎科学研究院(IBS)は11月10日、同院の研究チームが、量子オットー熱機関(quantum Otto engine)に対する、測定による影響を最小限に抑える手法を考案したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review X Quantumに掲載された。
(提供:IBS)
量子オットー熱機関は、自動車等で幅広く用いられているオットー熱機関と同じ4動作(圧縮、加熱、膨張、冷却)のサイクルを利用し、量子技術を取り入れた新たな熱機関である。その大きな特徴の一つが、同時に2つ以上のエネルギーの状態を保つことができる「可干渉性(coherence)」である。
従来の熱機関と異なり、量子オットー熱機関は、性能評価のための測定によって量子状態が大きく変化し、可干渉性が完全に失われる可能性がある。しかし、こうした測定による「奇妙な」影響は、量子熱機関の理解には関係のないものとして長年軽視されてきた。
今回の研究成果は、このような固定観念に変革をもたらす可能性がある。IBSの複雑系理論物理学研究センター(Center for Theoretical Physics of Complex Systems)の研究チームは、異なる測定手法が量子オットー熱機関の性能に及ぼす影響を調べた。さらに、各動作後に毎回測定を行うのではなく、動作サイクルの終了時にのみ測定を行う「反復接触(repeated contacts)」という手法を使用することで、測定回数を減らし、サイクル中に構築された可干渉性を破壊する等の影響を回避することに成功した。
熱機関のライフタイムを通じて可干渉性が保たれた結果、最大出力や信頼性等の重要な性能指標の値が改善した。
研究チームは、量子熱機関の測定と試験においては、測定手法に基づくこのような要因を考慮に入れることが不可欠であるとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部