韓国科学技術院(KAIST)は11月4日、塩の結晶でできた小さな球が乳濁液の液滴を自発的に包み込むカプセル化技術を開発した。その過程は折り紙でサッカーボールを作る様子に似ており、「結晶毛細折り紙(crystal capillary origami)」と名付けられた。研究成果は9月21日に学術誌 Nanoscale に掲載された。
(写真提供:KAIST)
「毛細折り紙」の形成には、弾性と毛管力の関係(elasto-capillarity)を利用する。液滴が平面シート状に置かれると、表面張力によりシートが自発的に液滴を包み込む仕組みである。
しかし、「従来の自己集合型折り紙構造は、完全な球になることができず、不連続な境界、すなわち縁(edge)ができてしまう。この境界があると、負荷が増大した時に欠陥が生じる可能性がある」とプロジェクトを率いたパク・クァンソク(Park Kwangseok)氏は語る。
今回の研究では、平面シートの代わりに塩の結晶の成長を用いることで、球状の毛細折り紙の作成に初めて成功した。
通常、塩化ナトリウム(食塩)等の塩の結晶は立方体構造だが、今回用いた数種類の塩の混合物は、微結晶(crystallite)の時点で板状の構造を形成し、これらの板状構造が自己集合して完全な球となる。
電子顕微鏡とX線回折解析を用いた分析の結果、微結晶の板が乳濁液の表面を覆う仕組みには、「Laplace pressure(ラプラス圧)」という現象が関連していることがわかった。
研究チームは、このカプセル化技術が、食品業界や化粧品、薬物送達、超小型医療機器等のさまざまな分野に利用されることを期待している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部